
機械に手を挟まれた技能実習生が学んだ安全対策
私は外壁塗装シートの製造工場で働く技能実習生です。
ある日、機械の掃除をしていたとき、回転するローラー部分に手を挟まれてしまいました。
幸い大きな怪我ではありませんでしたが、指を骨折してしまいました。
この事故をきっかけに、労働基準監督署の調査が入りました。
調査の結果、機械の掃除をするときに運転を停止していなかったことが問題だと分かりました。
私は「安全な働き方」について深く考えるようになりました。

| 出身国 | フィリピン |
|---|---|
| 日本語能力 | N3程度 |
| 職種 | 工業製品製造業(技能実習) |
| 就職ルート | 技能実習生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 生活支援・住環境の問題 |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和4年) |
まつむら機械の掃除や点検を行う際は、必ず機械の運転を停止させなければなりません。これは労働安全衛生規則第107条で定められている義務です。今回の事故は、この基本的な安全対策が守られていなかったために発生しました。
機械に手を挟まれた事故の経緯
異物除去のために手を入れた瞬間
その日、私は外壁塗装シートに塗料を塗る機械を担当していました。
作業中、シートに塗料を塗るローラー部分に異物が混入しました。
異物が入ったままだと、製品に傷がついてしまいます。
私は機械を止めずに、異物を取り除こうと手を入れてしまいました。
その瞬間、回転するローラーに指を挟まれてしまったのです。
強い痛みを感じて手を引き抜きましたが、指から血が出ていました。
すぐに病院に運ばれ、右手の人差し指を骨折していることが分かりました。



回転する機械に手を入れることは非常に危険です。ローラーやベルト、歯車などに巻き込まれると、指の切断や手の骨折など、重大な怪我につながる可能性があります。「少しだけなら大丈夫」という考えが、大きな事故を引き起こします。
なぜ機械を止めなかったのか
今思えば、なぜ機械を止めなかったのか自分でも分かりません。
工場では「生産を止めてはいけない」という雰囲気がありました。
先輩の作業員も、機械を動かしたまま掃除をしていることがありました。
「機械を止めると怒られる」という気持ちがあったのも事実です。
また、機械の停止方法についての教育を十分に受けていませんでした。
日本語での安全教育は行われていましたが、専門用語が多くて理解できていなかったのです。



事業者には、外国人労働者に対しても十分な安全衛生教育を行う義務があります。言語の壁がある場合は、母国語での教育や、図や絵を使った説明など、理解しやすい方法で教育を行う必要があります。理解していない状態での作業は、事故のリスクを高めます。
労働基準監督署の調査と是正勧告
私の労働災害をきっかけに、労働基準監督署が工場に立入調査を行いました。
調査の結果、機械の掃除を行う際に運転を停止していなかったことが確認されました。
これは労働安全衛生規則第107条に違反する行為でした。
会社は是正勧告を受け、改善措置を講じることになりました。
私の事故がなければ、同じような事故が他の人にも起きていたかもしれません。
辛い経験でしたが、工場の安全が改善されるきっかけになりました。



労働安全衛生規則第107条は、「機械の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない」と定めています。この規則に違反した場合、事業者は是正勧告を受け、場合によっては罰則の対象となります。
調べて分かった安全衛生の基本ルール
この事故をきっかけに、私は日本の安全衛生について調べました。
日本には「労働安全衛生法」という法律があり、働く人の安全と健康を守るルールが定められています。
発見①:機械作業の安全ルール
- 掃除・点検・修理の前に必ず機械を停止する
- 機械の危険な部分には囲いや覆いを設置する
- 非常停止装置の位置と使い方を確認しておく


これらのルールは、働く人の命を守るために定められています。
「面倒だから」「時間がないから」という理由で省略してはいけません。
一瞬の油断が、取り返しのつかない事故につながるのです。



機械の安全対策は、「ロックアウト・タグアウト」という方法が有効です。これは、機械を停止させた後、電源を切断してロックをかけ、「作業中」の表示をつけることで、他の人が誤って機械を動かさないようにする方法です。
発見②:外国人労働者への安全教育
事業者が行うべき安全教育
- 母国語での教育
- 日本語が不十分な場合は母国語で教育を行う
- 視覚的な教材の活用
- 図や絵、動画を使って分かりやすく説明する
- 理解度の確認
- 教育後に理解度を確認し、不十分な場合は再教育
事業者は、外国人労働者が安全に働けるよう、適切な教育を行う義務があります。
言葉が通じないからといって、教育を省略してはいけません。
もし教育内容が理解できない場合は、遠慮なく質問することが大切です。



厚生労働省は、外国人労働者向けの多言語安全衛生教材を作成しています。ベトナム語、中国語、インドネシア語、フィリピン語など、様々な言語に対応しています。事業者は、これらの教材を活用して効果的な安全教育を行うことが求められています。
会社が行った改善措置
是正勧告を受けて、会社は様々な改善措置を行いました。
機械の停止手順を確認する
まず、自分が使う機械の正しい停止手順を確認しましょう。
電源の切り方、安全装置の使い方を覚えておきます。
分からないことがあれば、必ず上司や先輩に聞いてください。
「聞くのは恥ずかしい」と思わないでください。命を守るために大切なことです。
非常停止装置の位置を把握する
機械には必ず非常停止装置(緊急停止ボタン)がついています。
赤い色の大きなボタンであることが多いです。
緊急時にすぐに押せるよう、位置を確認しておきましょう。
安全教育の内容を理解できているか確認する
会社で受けた安全教育の内容を、本当に理解できていますか?
日本語が難しくて分からなかった部分があれば、母国語での説明を求めることができます。
理解できていないまま作業をすることは、とても危険です。
遠慮せずに「もう一度説明してほしい」と伝えましょう。
危険な作業を強制された場合は相談する
もし会社から危険な作業を強制された場合は、断る権利があります。
断れない場合は、監理団体や外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。
自分の命を守ることは、最も大切なことです。
労災保険について理解しておく
仕事中に怪我をした場合、労災保険から治療費や休業補償が支払われます。
外国人労働者も、日本人と同じように労災保険の対象です。
会社が「労災を使わない」と言っても、あなたには労災保険を使う権利があります。
事故が起きたら必ず報告する
小さな怪我でも、必ず上司に報告してください。
「大したことない」と思っても、後で症状が悪化することがあります。
報告しないと、労災保険が使えなくなる可能性があります。
また、同じ事故が他の人に起きないよう、対策を取ることができます。



労災事故を報告しないことは「労災かくし」と呼ばれ、違法行為です。会社が報告を拒否する場合は、労働基準監督署に直接報告することもできます。自分の怪我は、自分で守る意識を持ちましょう。
まとめ:安全は全てに優先する
私の事故は、安全対策を怠った結果でした。
同じ経験を他の人にしてほしくありません。
- 機械の掃除や点検は必ず運転を停止してから行う
- 安全教育は母国語で受ける権利がある
- 危険な作業を強制された場合は断る権利がある
- 労災事故は必ず報告し労災保険を利用する


私は今、怪我が治り、再び同じ工場で働いています。
工場の安全対策は改善され、母国語での注意事項も掲示されるようになりました。
「安全は全てに優先する」この言葉を、私は一生忘れません。
皆さんも、自分の命を守るために、安全第一で働いてください。








