
朝礼の賃金が未払いだった農業技能実習生の体験談
私は農業の技能実習生として日本で働いていました。
毎朝、始業時間の15分前に朝礼がありました。
しかし、タイムカードを押すのは朝礼が終わった後でした。
つまり、朝礼の時間は「労働時間」として計算されていなかったのです。
私は「おかしい」と思いながらも、どうすればいいか分かりませんでした。
ある日、労働基準監督署の調査が入り、この問題が明らかになりました。

| 出身国 | インドネシア |
|---|---|
| 日本語能力 | N4程度 |
| 職種 | 農業(技能実習) |
| 就職ルート | 技能実習生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和4年) |
まつむら始業前の朝礼や準備時間であっても、参加が義務づけられている場合は「労働時間」に該当します。タイムカードの打刻時間ではなく、実際に使用者の指揮命令下に置かれている時間が労働時間となります。今回のケースは典型的な賃金未払いの事例です。
朝礼の賃金が支払われていないと気づくまで
毎日繰り返される始業前の朝礼
私が働いていた農場では、毎朝7時45分に朝礼がありました。
始業時間は8時なので、15分前に集合する必要があったのです。
朝礼では、その日の作業内容の確認や注意事項の伝達が行われました。
参加は全員に義務づけられており、遅刻すると上司に注意されました。
朝礼が終わると、私たちはタイムカードを押して作業を始めます。
最初は「日本の会社はこういうものなのかな」と思っていました。
しかし、同じ農場で働く先輩の実習生から「朝礼の時間は給料が出ていないよ」と教えられました。



労働基準法では、労働時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。朝礼への参加が義務であれば、それは明らかに使用者の指揮命令下にある時間です。タイムカードの打刻時間と実際の労働時間が一致しない場合、賃金未払いが発生している可能性があります。
労働基準監督署の調査で問題が発覚
ある日、労働基準監督署の職員が農場にやってきました。
事前に内偵調査が行われていたようで、朝礼の時間帯に合わせて立入調査が実施されました。
調査の結果、タイムカードを打刻せずに朝礼を行っていたことが確認されました。
私たち実習生だけでなく、日本人の従業員も同じ状況でした。
会社は朝礼時間の賃金を支払っていなかったことを認め、是正勧告を受けました。
「自分たちの働いた時間が正しく評価されていなかった」と分かり、複雑な気持ちになりました。



労働基準監督署は、労働者からの申告や情報提供を基に調査を行うことがあります。今回のように、朝礼の実施時間に合わせて立入調査を行うことで、実態を正確に把握することができます。賃金未払いが確認された場合、会社に対して是正勧告が出されます。
会社への是正勧告と未払い賃金の支払い
労働基準監督署からの是正勧告を受けて、会社は対応を迫られました。
まず、朝礼に参加していた全ての労働者について、過去の朝礼時間を精査しました。
その結果、私を含む技能実習生と日本人従業員に対して、合計約65万円の未払い賃金が支払われました。
1日15分でも、毎日積み重なると大きな金額になるのです。
また、会社は今後、朝礼の時間もタイムカードに記録するよう制度を変更しました。
私は「声を上げなくても、正しいことは正されるのだ」と学びました。



賃金請求権の消滅時効は3年間です。つまり、過去3年分の未払い賃金を請求することができます。今回のケースでは、会社が自主的に精査して支払いましたが、会社が応じない場合は労働基準監督署に申告したり、労働審判を申し立てたりすることも可能です。
調べて分かった労働時間と賃金の基本ルール
この経験をきっかけに、私は労働時間と賃金について調べました。
日本の法律では、「労働時間」とは使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。
つまり、会社の命令で何かをしている時間は、全て労働時間になります。
発見①:労働時間に含まれる時間
労働時間に含まれる時間の例
- 参加義務のある朝礼・終礼
- 遅刻や欠席で注意される場合は義務と判断される
- 作業準備・後片付けの時間
- 作業服への着替えや道具の準備なども含まれる
- 待機時間(手待ち時間)
- 仕事がなくても会社にいなければならない時間
これらの時間には全て賃金が支払われなければなりません。
「サービス残業」や「サービス早出」は違法なのです。



労働時間かどうかの判断は、形式ではなく実態で判断されます。たとえ会社が「自主参加」と言っていても、実際には参加しないと不利益を受ける場合は、労働時間と認められます。自分の働き方を見直して、未払いがないか確認することが大切です。
発見②:賃金請求には時効がある
- 賃金請求権の時効は3年間(2020年4月以降に発生した賃金)
- 時効を過ぎると請求できなくなる
- 未払いに気づいたら早めに行動することが重要
- 証拠(勤務記録、メモ、同僚の証言など)を残しておく
未払い賃金があることに気づいたら、できるだけ早く行動することが大切です。
3年を過ぎると、たとえ未払いがあっても請求できなくなってしまいます。
また、自分の出勤時間や作業内容をメモしておくと、後で証拠として使えます。



賃金の未払いを証明するためには、実際の労働時間を記録しておくことが重要です。タイムカードのコピー、自分で記録した出退勤時間、LINEやメールでの連絡履歴なども証拠になります。日頃から記録を残す習慣をつけておくことをおすすめします。
同じ問題に直面したときの対処法
私の経験から、同じ問題に直面している方へのアドバイスをまとめました。
自分の実際の労働時間を毎日記録する
まずは、自分が実際に働いている時間を毎日記録しましょう。
出勤時間、朝礼の開始時間、作業開始時間、退勤時間などを細かくメモします。
スマートフォンのメモアプリや手帳を使うと便利です。
この記録は、後で未払い賃金を請求するときの重要な証拠になります。
タイムカードのコピーを保管する
毎月のタイムカードは、コピーを取って保管しておきましょう。
会社によっては、タイムカードを一定期間で処分してしまうことがあります。
写真を撮っておくだけでも、後で役に立ちます。
朝礼や準備時間が義務かどうか確認する
朝礼や準備時間への参加が「義務」なのか「任意」なのかを確認します。
参加しないと注意される、評価に影響する場合は「義務」です。
義務であれば、その時間は労働時間として賃金が支払われるべきです。
就業規則や雇用契約書を確認してみましょう。
監理団体や外国人技能実習機構に相談する
技能実習生の場合、まずは監理団体に相談することができます。
監理団体が対応してくれない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に相談しましょう。
OTITは技能実習生の権利を守るための機関で、母国語での相談も可能です。
労働基準監督署に申告する
賃金未払いが明らかな場合は、労働基準監督署に申告することができます。
申告は匿名でも可能で、申告したことを理由に不利益な扱いを受けることは禁止されています。
証拠となる記録を持参すると、スムーズに対応してもらえます。
専門家(弁護士・社労士)に相談する
問題が複雑な場合や、会社が対応しない場合は、専門家に相談しましょう。
法テラスでは、無料で法律相談を受けることができます。
外国語対応が可能な弁護士を紹介してもらえることもあります。
専門家のサポートを受けることで、適切な対応が可能になります。



賃金未払いの問題は、一人で抱え込まないことが大切です。監理団体、OTIT、労働基準監督署、法テラスなど、相談できる窓口はたくさんあります。日本語に不安がある場合は、通訳サポートを受けられる窓口を利用しましょう。
まとめ:働いた時間の賃金は必ず受け取る権利がある
私と同じように、働いた時間の賃金が支払われていない方がいるかもしれません。
「少しの時間だから」「外国人だから仕方ない」と諦める必要はありません。
- 参加義務のある朝礼や準備時間は労働時間に含まれる
- タイムカードの打刻時間ではなく実際の労働時間で賃金が計算される
- 賃金請求権の時効は3年間なので早めの行動が重要
- 労働基準監督署やOTITなど相談できる窓口を活用する


私はこの経験を通じて、働いた時間に対して正当な賃金を受け取ることは、当然の権利だと学びました。
日本で働く外国人にも、日本人と同じ労働法が適用されます。
困ったときは一人で悩まず、相談窓口を利用してください。
自分の権利を守ることは、恥ずかしいことではありません。








