
機械清掃中に指を挟まれた食品工場の体験談
私は食品製造工場で働いていた外国人です。
在留資格は「特定技能1号」で、母国では同じような工場で働いた経験がありました。
ある日、ベルトコンベヤーの清掃作業中に機械の回転部分に指を挟まれる事故に遭いました。
幸い大きな怪我にはなりませんでしたが、しばらくの間は痛みで仕事ができませんでした。
後から分かったことですが、清掃時に機械を止めるという基本的なルールが守られていなかったのです。
この事故をきっかけに、労働基準監督署の調査が入りました。

| 出身国 | フィリピン |
|---|---|
| 日本語能力 | N3程度 |
| 職種 | 飲食料品製造業(特定技能1号) |
| 就職ルート | 技能実習生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和3年) |
まつむら機械の清掃や点検を行う際は、必ず機械を停止させることが労働安全衛生法で定められています。これは労働者の安全を守るための基本的なルールです。今回の事故は、会社がこのルールを守っていなかったために起きた労働災害です。
労働災害が起きるまでの経緯
教えられなかった機械停止のルール
私が食品工場で働き始めたのは1年半前のことです。
入社時に簡単な研修を受けましたが、内容は製品の品質管理が中心でした。
機械の清掃方法については、先輩から「こうやってやるんだよ」と口頭で教えられただけでした。
その時、ベルトコンベヤーは動いたままの状態でした。
「機械を止めなくていいんですか?」と聞きましたが、「時間がかかるから、このままで大丈夫」と言われました。
日本の工場のやり方はこういうものなのかと思い、私もそのまま作業を覚えてしまいました。



労働安全衛生規則第107条では、機械の掃除、給油、検査、修理等を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならないと定められています。「時間がかかるから」は理由になりません。
事故が起きた瞬間
事故が起きたのは、いつもと同じ清掃作業をしていた時でした。
ベルトコンベヤーに付着した食品の汚れを布で拭き取っていました。
その時、布がローラーに巻き込まれ、一緒に右手の指も挟まれてしまいました。
激しい痛みで叫び声を上げると、近くにいた同僚がすぐに機械を止めてくれました。
指は赤く腫れ上がり、動かすこともできませんでした。
すぐに病院に運ばれ、幸い骨折はしていませんでしたが、2週間は仕事を休むことになりました。
この事故をきっかけに、労働基準監督署による立入調査が行われることになったのです。



労働災害が発生した場合、会社は労働基準監督署に報告する義務があります。監督署は事故の原因を調査し、同様の事故を防ぐために必要な指導を行います。今回のケースでは、機械の運転停止義務違反が認められました。
調査で明らかになった会社の安全管理の問題
労働基準監督署の調査により、私が働いていた工場には大きな問題があることが分かりました。
機械の清掃時に運転を停止するという基本的なルールが、誰にも教えられていなかったのです。
私だけでなく、他の従業員も同じように機械を動かしたまま清掃をしていました。
これは労働安全衛生法第20条と労働安全衛生規則第107条に違反する行為でした。
会社は是正勧告を受け、すぐに改善に取り組むことになりました。



労働安全衛生法第20条は、事業者が機械による危険を防止するために必要な措置を講じなければならないと定めています。安全教育の不足や作業手順の不備は、会社の責任となります。
調査で分かった労働者の安全に関する権利
今回の事故と調査を通じて、私は労働者の安全に関する権利について多くのことを学びました。
安全な職場で働く権利
会社が守るべき安全管理の義務
- 機械の安全対策
- 清掃・点検時は必ず機械を停止させる
- 危険な部分には防護柵を設置する
- 安全教育の実施
- 入社時に危険な作業について教育する
- 定期的に安全に関する研修を行う
- 作業手順の整備
- 安全な作業手順書を作成する
- 労働者が理解できる言語で説明する
すべての労働者は、安全な環境で働く権利を持っています。
会社は労働者を危険から守るための措置を講じる義務があります。
機械の危険な部分に防護柵を設置したり、安全な作業手順を定めたりすることは会社の責任です。
「早く作業を終わらせるため」という理由で安全対策を省くことは許されません。



外国人労働者であっても、日本人労働者と同じように労働安全衛生法による保護を受ける権利があります。言葉の壁があっても、安全教育は労働者が理解できる方法で行われなければなりません。
労災保険で補償を受ける権利
- 治療費は全額補償される
- 休業中は給与の約8割が支給される
- 後遺症が残った場合は障害補償がある


仕事中に怪我をした場合、労災保険による補償を受けることができます。
外国人労働者も日本人と同様に労災保険の対象となります。
治療費は全額補償され、仕事を休んでいる間も給与の約8割が支給されます。
会社が「労災は使えない」と言っても、それは嘘です。
労災保険の申請は労働者自身が行うこともできます。



労災保険は、在留資格に関係なくすべての労働者に適用されます。会社が労災保険に加入していなくても、労働者は補償を受けることができます。労災隠しは犯罪であり、会社は厳しく罰せられます。
会社の改善と安全な職場づくり
是正勧告を受けた後、会社は様々な改善に取り組みました。
危険な作業の手順を確認する
機械を使う作業を始める前に、安全な手順をしっかり確認してください。
特に清掃や点検の際は、機械を止めることが基本です。
分からないことがあれば、必ず上司や先輩に質問しましょう。
不安全な状況を発見したら報告する
職場で危険だと感じる場所や作業を見つけたら、すぐに上司に報告してください。
「何も言わない」ことが一番危険です。
あなたの報告が、他の人の怪我を防ぐことにつながります。
安全教育を受ける権利を主張する
会社には労働者に安全教育を行う義務があります。
入社時だけでなく、新しい機械を使う時や作業内容が変わる時にも教育を受ける権利があります。
日本語が分からない場合は、母国語での説明を求めることもできます。
怪我をしたらすぐに報告する
仕事中に怪我をしたら、どんな小さな怪我でもすぐに上司に報告してください。
会社には労働災害を報告する義務があります。
「大したことない」と思っても、後から症状が悪化することもあります。
困ったときは相談窓口を利用する
職場の安全について困ったことがあれば、労働基準監督署や外国人労働者向けの相談窓口を利用できます。
労働条件相談ほっとラインでは、多言語での相談が可能です。
電話番号は0120-811-610で、無料で相談できます。



私の事故の後、会社はベルトコンベヤーの回転部分に防護柵を設置し、全従業員に安全教育を実施しました。「機械の清掃時は必ず停止させる」というルールが徹底されるようになり、今では安心して働けています。
まとめ:自分の身は自分で守る意識を
私と同じように、危険な作業環境で働いている外国人労働者の方がいるかもしれません。
「日本ではこれが普通」と思い込まないでください。
- 機械の清掃時は必ず運転を停止させることが法律で義務付けられている
- 会社には労働者の安全を守るための教育と対策を講じる義務がある
- 仕事中の怪我は労災保険で補償される(外国人も対象)
- 危険を感じたら我慢せず、相談窓口を利用することが大切


私の事故は、正しいルールが守られていれば防げたものでした。
あなたの命と健康は、何よりも大切です。
危険だと感じたら、勇気を出して声を上げてください。
会社が対応してくれない場合は、労働基準監督署や相談窓口に連絡してください。
あなたには、安全な職場で働く権利があります。








