
違法な時間外労働で割増賃金未払い
私は縫製工場で働く技能実習生です。
毎日、長時間働いていましたが、残業代はわずかでした。
ある日、給料明細をよく見ると、時間外労働に対して1時間あたり400円程度しか支払われていないことに気づきました。
これは明らかにおかしいと思い、調べてみると、法律で定められた割増賃金が全く支払われていないことが分かりました。
さらに、会社には有効な36協定がなく、時間外労働そのものが違法だったのです。
この問題は、最終的に会社が送検されるという重大な事態に発展しました。

| 出身国 | ベトナム |
|---|---|
| 日本語能力 | N4程度 |
| 職種 | 工業製品製造業(技能実習) |
| 就職ルート | 技能実習生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和2年) |
まつむら時間外労働をさせるには、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。また、時間外労働の割増賃金は、通常の賃金の25%以上で計算しなければなりません。これらに違反すると、労働基準法違反で送検される可能性があります。
毎日の長時間労働と少なすぎる残業代
1時間400円の残業代という現実
私は毎日、朝8時から夕方6時まで働いていました。
昼休みは1時間なので、実働9時間です。
つまり、毎日1時間の残業をしていることになります。
忙しい時期には、夜8時や9時まで働くこともありました。
ところが、給料明細を見ると、時間外労働手当として支払われているのは、1時間あたり400円程度でした。
私の基本給は月18万円で、1か月の労働時間は約160時間です。
計算すると、1時間あたりの賃金は約1,125円になります。
時間外労働の割増賃金は、この1.25倍なので、本来は1時間あたり約1,406円以上が支払われるべきでした。
しかし、実際には400円しか払われていなかったのです。



時間外労働の割増賃金の計算方法は、「1時間あたりの賃金 × 1.25 × 時間外労働時間数」です。固定額での支払いは、この計算式で算出される金額を下回っている場合、違法となります。
36協定が無効だったという衝撃
労働基準監督署の調査が入り、さらに驚くべき事実が明らかになりました。
会社には36協定があったのですが、その協定は無効なものだったのです。
36協定とは、時間外労働や休日労働をさせるために、会社と労働者の代表が結ぶ協定のことです。
この協定がないと、時間外労働をさせること自体が違法になります。
私たちの会社にも36協定はありましたが、労働者代表の選出方法に問題がありました。
会社の上司が勝手に誰かを労働者代表に指名していたのです。
本来、労働者代表は、労働者が民主的に選ぶ必要があります。
会社の意向で選ばれた労働者代表が結んだ36協定は無効となり、私たちの時間外労働は全て違法だったことになりました。



労働者代表は、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者を民主的な方法で選出する必要があります。使用者が指名した者は労働者代表として認められず、その者が締結した36協定は無効となります。
労働基準監督署の調査で発覚した2つの違法行為
労働基準監督署の調査により、会社の違法行為が次々と明らかになりました。
適法な36協定なしでの時間外労働
- 労働者代表を会社が指名した
- 労働者の投票や挙手による選出がない
- 労働者の意見が反映されていない


36協定が無効だったため、会社が私たちに時間外労働をさせていたこと自体が違法でした。
これは、労働基準法第32条第1項・第2項違反(労働時間)に該当します。
法定労働時間は1日8時間、週40時間と定められており、これを超えて労働させるには適法な36協定が必要です。
適法な36協定がなければ、1時間でも時間外労働をさせることはできません。
労働基準監督署は、この点について会社に厳しく指摘しました。



労働基準法第32条では、使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、または1日について8時間を超えて、労働させてはならないと定められています。36協定なしでこれを超えて労働させた場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
法定割増率を満たさない残業代の支払い
もう1つの違法行為は、割増賃金の不足でした。
会社は時間外労働に対して1時間400円程度を支払っていましたが、これは法定の割増率(25%以上)を大きく下回っていました。
正しく計算すると、私の場合、1時間あたり約1,406円以上の残業代が必要でした。
実際には400円しか払われていなかったので、1時間あたり約1,000円以上の未払いがありました。
これを毎日1〜3時間、数か月分累計すると、非常に大きな金額になります。
これは、労働基準法第37条第1項違反(割増賃金の不払い)に該当します。



労働基準法第37条第1項では、時間外労働に対して通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で割増賃金を支払わなければならないと定められています。これに違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
会社が送検された理由と経緯
労働基準監督署は、会社の違法行為が悪質だと判断し、送検することを決定しました。
2つの労働基準法違反で刑事告発
- 労働基準法第32条第1項・第2項違反(適法な36協定なしでの時間外労働)
- 労働基準法第37条第1項違反(法定割増率を満たさない残業代の支払い)
会社は、実習実施者である法人と、事業主(社長)の両方が送検されました。
1つ目の罪は、適法な36協定がないにもかかわらず、時間外労働を行わせたことです。
2つ目の罪は、時間外労働に対して、法定の割増率以上で計算した割増賃金を支払っていなかったことです。
これらの違法行為は、是正勧告では改善されず、悪質性が高いと判断されたため、刑事告発に至りました。



労働基準監督署は、違法行為が悪質な場合や是正勧告に従わない場合、刑事告発(送検)を行います。送検されると、検察庁で起訴・不起訴が判断され、起訴された場合は裁判所で審理されます。有罪判決を受けると、罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。
技能実習生を守るための厳正な対応
労働基準監督署の担当者は、私たちにこう説明してくれました。
「技能実習生は、言葉や文化の違いから、会社の違法行為に気づきにくく、また声を上げにくい立場にあります。
そのような弱い立場の労働者を搾取する行為は、特に悪質だと判断されます」
実際、労働基準監督署は、技能実習生の労働問題に対して、特に厳しい姿勢で臨んでいます。
私たちの事件も、技能実習生が被害者だったことが、送検の判断に影響したと思います。



技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的とした制度ですが、労働法規の適用は日本人労働者と全く同じです。技能実習生だからといって、低賃金や長時間労働が許されるわけではありません。違法行為は厳正に取り締まられます。
同じ問題を抱える技能実習生へのアドバイス
残業代が少なすぎると感じている技能実習生の皆さん、それは違法かもしれません。
残業代の正しい計算方法を知る
残業代の計算方法
- ステップ1
- 月給 ÷ 月の所定労働時間 = 1時間あたりの賃金
- ステップ2
- 1時間あたりの賃金 × 1.25 = 残業代
- 例
- 月給18万円、月160時間の場合
- 残業代は1時間あたり1,406円以上
まず、自分の残業代が正しく計算されているか確認しましょう。
月給を月の所定労働時間で割って、1時間あたりの賃金を計算します。
それに1.25をかけたものが、最低限支払われるべき残業代です。
給料明細の残業代がこれより少ない場合、違法の可能性があります。
36協定の有無を確認する
会社に36協定があるかどうかも重要です。
36協定は、会社の見やすい場所に掲示されているはずです。
もし見当たらない場合は、会社に確認してみましょう。
また、36協定があっても、労働者代表が適正に選ばれていない場合、その協定は無効です。
労働者代表は、会社が勝手に指名するのではなく、労働者が投票や挙手などで選ぶ必要があります。



36協定は、事業場ごとに締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。届出がない場合、または労働者代表の選出方法が不適切な場合、36協定は無効となり、時間外労働自体が違法となります。
問題解決のための具体的な行動ステップ
残業代が正しく支払われていない場合、以下のステップで行動してください。
残業代を計算する
自分の月給と月の所定労働時間から、正しい残業代を計算してみましょう。
給料明細の残業代と比較してください。
記録を保管する
毎月の給料明細、タイムカード、労働時間の記録などを保管しましょう。
これらは重要な証拠となります。
36協定を確認する
会社に36協定があるか、またその労働者代表がどのように選ばれたか確認しましょう。
会社が指名した場合、その協定は無効です。
会社に説明を求める
残業代が少ない理由を会社に聞いてみましょう。
納得できる説明がない場合は、次のステップに進みます。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署に相談し、会社の残業代支払いが適法かどうか確認してもらいましょう。
違法であれば、是正勧告が出されます。
未払い賃金の支払いを求める
労働基準監督署の調査で未払い賃金が確認されたら、会社に支払いを求めます。
支払われない場合は、法的手段も検討できます。
まとめと読者へのメッセージ
私の経験から、技能実習生の皆さんに伝えたいことがあります。
- 時間外労働には適法な36協定が必要
- 残業代は通常賃金の25%以上で計算される
- 固定額の残業代でも法定割増率を満たす必要がある
- 違法な残業代不足は送検される可能性がある


残業代が少なすぎると感じたら、それは違法かもしれません。
自分で計算して確認し、おかしいと思ったら労働基準監督署に相談してください。
日本の法律は、技能実習生も日本人労働者と同じように守っています。
あなたの権利を主張することは、決して悪いことではありません。








