
労働基準監督署への虚偽報告で送検された会社
私は縫製工場で働く技能実習生です。
毎日、朝8時から夜10時まで働いていました。
ある日、労働基準監督署の調査が入りました。
会社の社長は、最初は長時間労働を認めていました。
しかし、次の調査では「タイムカードが正しい」と嘘の報告をし、私たちの本当の労働時間を記録した書類を捨ててしまったのです。
この行為が発覚し、会社は刑事告発されることになりました。

| 出身国 | 中国 |
|---|---|
| 日本語能力 | N3程度 |
| 職種 | 工業製品製造業(技能実習) |
| 就職ルート | 技能実習生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和2年) |
まつむら労働基準監督署への虚偽報告は、労働基準法第120条違反で刑事罰の対象となります。また、労働関係書類の保存義務違反も処罰されます。会社が証拠隠滅を図った場合、より悪質と判断され、送検される可能性が高くなります。
最初の労働基準監督署の調査で発覚した長時間労働
毎日14時間労働の過酷な実態
私たちの工場では、毎日朝8時から夜10時まで働くのが当たり前でした。
休憩時間は昼に1時間だけなので、実働13時間、残業時間は毎日5時間という状況でした。
休日は月に2日だけで、それ以外はずっと働いていました。
納期が迫っている時は、さらに遅くまで働かされることもありました。
私たちは疲れ切っていましたが、「仕事だから仕方ない」と思って我慢していました。
ある日、誰かが労働基準監督署に通報したようで、調査が入ることになりました。



労働基準法では、1日8時間、週40時間が法定労働時間です。これを超える労働をさせるには、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。また、36協定があっても、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間です。
社長が最初は違法労働を認めた
労働基準監督署の調査員が工場に来た日のことは、今でもよく覚えています。
社長は会議室に呼ばれ、長時間の聴取を受けました。
その日の夕方、社長が私たちを集めて話をしました。
「労働基準監督署の調査で、違法な長時間労働が指摘された。
タイムカードや賃金台帳に記載されている時間以上に、実際には時間外労働をさせていたことを認めた」と説明しました。
私たちは「これで労働時間が改善されるかもしれない」と期待しました。
しかし、この期待は裏切られることになります。



労働基準監督署の調査では、タイムカードや賃金台帳だけでなく、実際の労働実態を詳しく確認します。会社が違法行為を認めた場合、是正勧告が出され、改善報告書の提出が求められます。
会社が虚偽報告と証拠隠滅を図った経緯
最初の調査から数週間後、再び労働基準監督署の調査が入りました。
しかし、今度は様子が違っていました。
前回の説明を覆す虚偽の報告
2回目の調査で、社長は突然、前回の説明を覆しました。
「先日の説明は勘違いだった。
タイムカードや賃金台帳に記載された内容が正しく、それ以上の時間外労働はさせていない」と主張したのです。
労働基準監督署は、この説明に疑問を持ち、事実の確認に必要な書類の提出を命じました。
しかし、社長は再度「タイムカードと賃金台帳が正しい」という報告を繰り返しました。
私たちは、会社が嘘をついていることを知っていましたが、何も言えませんでした。



労働基準法第104条の2では、労働基準監督署長は必要な事項の報告を命じることができます。この報告命令に対して虚偽の報告をした場合、労働基準法第120条第5号により、30万円以下の罰金に処せられます。
実際の労働時間記録を廃棄した証拠隠滅
後で分かったことですが、社長は虚偽報告をするだけでなく、証拠隠滅も図っていました。
工場には、私たちの実際の労働時間を記録した別の台帳がありました。
これは、社長が残業代を少なく支払うために、表向きのタイムカードとは別に管理していたものです。
社長は、この本当の記録を捨ててしまい、労働基準監督署に提出しませんでした。
また、実際に使っていたタイムカードも廃棄されました。
しかし、労働基準監督署は徹底的な捜査を行い、これらの事実を突き止めました。



労働基準法第109条では、使用者は労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならないと定めています。賃金台帳やタイムカードなどを保存しなかった場合、同法第120条により、30万円以下の罰金に処せられます。
労働基準監督署の捜査で明らかになった真実
労働基準監督署は、会社の説明に疑いを持ち、本格的な捜査に着手しました。
技能実習生への聞き取り調査
- 技能実習生への個別聞き取り調査
- 実際の労働時間の詳細な記録
- 廃棄された書類の痕跡の発見
- 虚偽報告の証拠の確保


労働基準監督署の調査員は、私たち技能実習生一人ひとりに丁寧に話を聞いてくれました。
「本当の労働時間を教えてください。
会社に遠慮する必要はありません」と言われ、私たちは毎日朝8時から夜10時まで働いていること、休日は月2日だけだったことを正直に話しました。
また、実際の労働時間を記録した別の台帳があったこと、それが調査の前に捨てられたことも証言しました。
これらの証言が、会社の違法行為を立証する重要な証拠となりました。



労働基準監督署の捜査では、労働者への聞き取り調査が重要な役割を果たします。技能実習生の皆さんは、会社に遠慮せず、本当のことを話してください。労働基準監督署は、労働者を守るために存在しています。
会社が法人と社長個人で送検された
捜査の結果、会社の違法行為が明確になり、労働基準監督署は会社を送検することを決定しました。
送検されたのは、実習実施者である会社(法人)と、社長(事業主)の両方でした。
罪名は以下の2つです。
- 労働基準法第104条の2第1項・第120条第5号違反(虚偽報告)
- 労働基準法第109条違反(記録の保存義務違反)
1つ目は、労働基準監督署長からの報告命令に対して虚偽の報告を行ったことです。
2つ目は、労働関係に関する重要な書類(実際の労働時間を記録した台帳やタイムカード)を3年間保存しなかったことです。
これらの行為は、単なる是正勧告では済まされず、刑事罰の対象となる重大な違法行為でした。



労働基準法違反で送検されると、刑事事件として裁判所で審理されます。有罪判決を受けると、罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。また、送検された事実は公表され、会社の社会的信用を大きく損ないます。
この事件から学ぶべき重要なポイント
この事件は、会社が違法行為を隠そうとしても、必ず真実は明らかになることを示しています。
虚偽報告や証拠隠滅は重大な犯罪
会社が犯した3つの重大な過ち
- 違法な長時間労働
- 毎日14時間労働を強制
- 適切な36協定なし
- 虚偽報告
- 最初の説明を覆す
- 嘘の報告を繰り返す
- 証拠隠滅
- 労働時間記録を廃棄
- タイムカードを捨てる
この会社は、最初は違法行為を認めながら、後でそれを覆して虚偽の報告をしました。
さらに、証拠となる書類を廃棄して証拠隠滅を図りました。
これらの行為は、違法な長時間労働そのものよりも悪質だと判断され、送検につながりました。
労働基準監督署は、このような悪質な違法行為に対しては、厳正に対処します。
労働者は正直に証言することが大切
この事件では、私たち技能実習生の証言が、真実を明らかにする上で重要な役割を果たしました。
会社から「何も話すな」と圧力をかけられることもありましたが、労働基準監督署の調査員を信じて、本当のことを話して良かったと思っています。
労働者が嘘をつく必要はありません。
労働基準監督署は、労働者の味方です。
正直に証言することで、自分自身だけでなく、他の労働者も守ることができます。



労働基準監督署の調査で、会社から「何も話すな」と言われることがありますが、これは違法行為です。労働者には、調査に協力し、真実を話す権利があります。会社の圧力に屈する必要はありません。
同じような状況にある技能実習生へ
もし、あなたの会社が違法な長時間労働をさせている場合、一人で悩まないでください。
労働基準監督署への通報は匿名でも可能
労働基準監督署には、匿名で通報することができます。
電話やメール、郵送など、様々な方法で通報できます。
会社に知られることなく、違法行為を通報することが可能です。
また、技能実習生の場合、外国人技能実習機構(OTIT)にも相談できます。
母国語で相談できる窓口もあるので、安心して相談してください。
問題解決のための具体的な行動ステップ
違法な長時間労働に直面している場合、以下のステップで行動してください。
労働時間を記録する
毎日の出勤時刻と退勤時刻をノートやスマートフォンに記録しましょう。
休憩時間や残業時間も詳しく記録してください。
証拠を保管する
給料明細、タイムカード、雇用契約書など、関連する書類はすべて保管してください。
可能であれば、コピーを取っておくことをお勧めします。
同僚と情報共有する
同じ職場の仲間と情報を共有しましょう。
複数人で問題を共有することで、証言の信頼性が高まります。
労働基準監督署に通報する
労働基準監督署に、違法な長時間労働について通報しましょう。
匿名での通報も可能です。
技能実習機構に相談する
技能実習生の場合、外国人技能実習機構にも相談できます。
母国語での相談も可能です。
調査に協力する
労働基準監督署の調査が入った場合、正直に証言しましょう。
会社からの圧力に屈する必要はありません。
まとめと読者へのメッセージ
この事件を通じて、私は大切なことを学びました。
- 虚偽報告や証拠隠滅は刑事罰の対象となる
- 労働基準監督署の調査には正直に協力する
- 違法行為は必ず明らかになる
- 労働者は法律で守られている


会社が違法行為を隠そうとしても、真実は必ず明らかになります。
労働基準監督署は、労働者を守るために存在しています。
技能実習生の皆さん、会社の違法行為に気づいたら、一人で悩まず、必ず相談してください。
あなたの勇気が、自分自身だけでなく、他の労働者も救うことになります。








