
スライサーで指を骨折!安全教育なしの代償
私は水産食料品の工場で働いている技能実習生です。
毎日、魚を加工する作業をしていました。
ある日、いつものようにスライサーを使って作業をしていたとき、機械に詰まった材料を取り除こうとして、動いているスライサーに右手を入れてしまいました。
刃が回転していることは分かっていましたが、早く作業を終わらせたかったのです。
結果、指が刃に接触して骨折してしまいました。
病院で治療を受けながら、「なぜこんなことになったのか」と何度も考えました。

| 出身国 | ベトナム |
|---|---|
| 日本語能力 | N3程度 |
| 職種 | 飲食料品製造業(技能実習) |
| 就職ルート | 母国からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 生活支援・住環境の問題 |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(平成31年・令和元年) |
まつむら労働災害が発生した場合、会社には再発防止のための対策を講じる義務があります。特に機械を使用する作業では、作業手順書の作成と安全教育が不可欠です。今回のケースでは、会社側の安全管理体制に問題があったと考えられます。
事故が起きるまでの経緯
安全教育を受けないまま始まった作業
私が日本に来て工場で働き始めたとき、機械の使い方は先輩から口頭で教えてもらいました。
「この機械はこうやって動かす」「材料はここに入れる」という簡単な説明だけでした。
作業手順書というものは存在せず、安全に関する教育も受けていませんでした。
日本語が十分に理解できない私にとって、口頭での説明だけでは不安でした。
しかし、周りの人たちも同じように作業していたので、それが普通だと思っていたのです。
危険な作業についての注意も、母国語で説明されることはありませんでした。



労働安全衛生法では、事業者は労働者に対して安全衛生教育を実施する義務があります。特に危険な機械を扱う場合は、作業手順書を作成し、労働者が理解できる言語で教育を行うことが重要です。
機械を止めずに詰まりを取り除こうとした判断
事故が起きた日、スライサーに材料が詰まってしまいました。
このようなことは以前にも何度かありました。
そのたびに私は機械を止めずに手を入れて詰まりを取り除いていました。
機械を止めると時間がかかるし、生産のノルマに遅れてしまうと思ったからです。
その日も同じように、動いている機械に手を入れました。
しかし、手が滑って刃に触れてしまったのです。
痛みで叫び声を上げ、周りの人たちが駆けつけてくれました。
すぐに病院に運ばれ、右手の指が骨折していることが分かりました。



労働安全衛生規則第107条では、機械の掃除や調整を行う際は、機械の運転を停止しなければならないと定められています。生産効率を優先して安全を軽視することは、重大な労働災害につながる危険があります。
労働基準監督署の指導で明らかになった会社の問題点
私の事故をきっかけに、労働基準監督署が会社に調査に来ました。
調査の結果、会社にはいくつかの重大な問題があることが分かりました。
作業手順書が作成されていなかったこと、そして技能実習生に対する安全教育が行われていなかったことが指摘されました。
監督署は会社に対して、機械の掃除や調整を行う際は必ず機械を停止するよう是正勧告を出しました。
これは労働安全衛生法に基づく重要な指導でした。



労働基準監督署からの是正勧告は、法律違反を是正するための行政指導です。会社はこの勧告に従って改善措置を講じる必要があります。従わない場合は、さらに厳しい処分を受ける可能性があります。
指導後に会社が取った対策
労働基準監督署の指導を受けて、会社は様々な改善を行いました。
母国語の作業手順書と安全教育の実施
- 技能実習生の母国語による作業手順書を作成
- 全ての技能実習生に対する安全教育を実施
- スライサーに日本語と母国語で注意喚起のシールを貼付


会社は私たち技能実習生の母国語で書かれた作業手順書を新しく作成しました。
この手順書には、機械を使う際の安全な手順が詳しく書かれています。
特に「材料が詰まったときは必ず機械を止めてから取り除く」ということが強調されています。
また、全ての技能実習生を集めて安全教育が行われました。
私たちが理解できる言葉で、なぜ安全が大切なのかを説明してくれました。
機械への注意喚起表示の設置
スライサーの材料投入口には、日本語と母国語で書かれた注意喚起のシールが貼られました。
「機械を止めてから手を入れてください」という警告が、一目で分かるようになっています。
掃除や調整を行う際の機械の運転停止が徹底されるようになりました。
今では、材料が詰まっても焦らずに機械を止めてから対処しています。



外国人労働者が安全に働くためには、母国語での情報提供が不可欠です。作業手順書や注意喚起表示を多言語で作成することは、労働災害を防ぐための重要な取り組みです。
同じ事故を繰り返さないために私が今すべきこと
私のケガは時間とともに回復しましたが、この経験から多くのことを学びました。
作業手順書を必ず読んで理解する
会社が作成した母国語の作業手順書を、作業を始める前に必ず読み返します。
特に危険な作業については、手順を暗記するくらい繰り返し確認することが大切です。
分からないことは必ず質問する
作業手順や安全対策について分からないことがあれば、恥ずかしがらずに質問します。
理解しないまま作業を続けることは、自分だけでなく周りの人も危険にさらすことになります。
機械のトラブル時は必ず停止させる
材料が詰まったり、機械に異常を感じたりしたときは、必ず機械を停止させます。
作業時間が遅れても、安全を最優先にすることが重要です。
私の事故は、この基本を守らなかったことが原因でした。
危険を感じたら作業を中断して報告する
少しでも危険を感じたら、すぐに作業を中断して上司や監督者に報告します。
「大丈夫だろう」という判断が、大きな事故につながることがあります。
報告することは、自分と仲間を守る大切な行動です。
安全教育の内容を定期的に復習する
一度受けた安全教育の内容も、時間が経つと忘れてしまうことがあります。
定期的に作業手順書や安全マニュアルを見直して、安全意識を維持します。
労働災害保険の手続きを確認する
万が一事故が起きた場合に備えて、労働災害保険(労災保険)の手続きについて確認しておきます。
技能実習生も日本人と同じように労災保険の適用を受けることができます。
治療費や休業補償を受けるための手続きを、事前に理解しておくことが大切です。
分からないことは監理団体や(厚生労働省)に相談できます。



労働災害を防ぐためには、会社と労働者の双方が安全意識を持つことが重要です。作業手順を守り、危険を感じたら躊躇なく報告することが、自分と仲間の命を守ることにつながります。
まとめ:この経験を同じ立場の人に伝えたい
私は指を骨折するという痛い経験をしました。
しかし、もっと大きな事故になっていた可能性もあったのです。
- 機械の掃除や調整を行う際は、必ず機械を停止させることが法律で定められている
- 会社は技能実習生に対して、母国語で安全教育を行う義務がある
- 作業手順書がない場合は、会社に作成を求めることができる
- 労働災害が発生した場合、労働基準監督署に相談することができる


私はこれから、作業手順書を必ず確認し、安全を最優先に作業をしていきます。
「時間がもったいない」という気持ちが、一生残る傷や、命を失うことにつながる可能性があるのです。
同じように工場で働いている技能実習生の皆さん、安全教育を受ける権利があります。
もし会社が安全教育をしていない場合は、監理団体や労働基準監督署に相談してください。
私たちの安全は、私たち自身で守る意識を持つことが大切です。








