
36協定違反と労働安全衛生法違反の是正指導
私は自動車部品を製造する工場で働く技能実習生でした。
毎日長時間働き、休日もほとんどない生活が続いていました。
溶接作業では粉じんが舞う中、マスクもつけずに作業を続けていました。
疲れと体調不良で悩んでいましたが、会社に言えば実習を打ち切られるのではないかと恐れていました。
ある日、労働基準監督署の調査が入り、私たちの労働環境が大きく改善されることになったのです。

| 国 | ベトナム |
|---|---|
| 日本語能力 | N4程度 |
| 職種 | 工業製品製造業(技能実習2号) |
| 就職ルート | 技能実習生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 生活支援・住環境の問題 |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(平成31年・令和元年) |
まつむら36協定の上限時間を超えた時間外労働は違法です。また、粉じん作業では防じんマスクの着用とじん肺健康診断の実施が義務付けられています。労働者の健康と安全を守るため、労働基準監督署は厳格な指導を行います。
月100時間を超える長時間労働の実態
終わらない残業と休めない日々
私が働いていた工場は、自動車部品を製造する会社でした。
納期が厳しく、毎日遅くまで残業が続きました。
朝8時に出勤し、夜10時や11時まで働くことが当たり前でした。
休憩時間も十分に取れず、土曜日も日曜日も出勤することが多くありました。
タイムカードには残業時間が記録されていましたが、私たちにはどれだけ働いているのか、法律でどこまで許されているのか、よく分かりませんでした。
ただ、「仕事が多いから頑張ってくれ」と言われ、断ることができませんでした。
技能実習生という立場もあり、文句を言えば帰国させられるのではないかという不安もありました。



労働基準法では、1日8時間、週40時間が法定労働時間です。これを超えて働かせる場合は、36協定の締結と届出が必要であり、36協定で定めた上限時間を超える残業は違法です。
体調不良と健康診断の未実施
長時間労働が続く中、私は体調を崩すようになりました。
疲れが取れず、頭痛やめまいに悩まされました。
同僚の技能実習生たちも同じように疲れた顔をしていました。
会社は、月80時間を超える残業をした労働者には医師による面接指導を実施すると言っていましたが、実際には誰も受けていませんでした。
私たちは、自分の健康状態が心配でしたが、どこに相談すればいいのか分かりませんでした。
また、溶接作業を担当していた私たちは、粉じんが舞う環境で働いていましたが、じん肺健康診断も受けたことがありませんでした。



過重労働による健康障害を防止するため、月80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者に対しては、医師による面接指導の実施が努力義務となっています。また、月100時間を超える場合は、労働者からの申し出があれば必ず実施しなければなりません。
粉じん作業の危険な実態
私は金属のアーク溶接などの粉じん作業を担当していました。
溶接の際には、金属の粉じんが舞い上がり、喉や鼻が痛くなることがありました。
しかし、会社からは防じんマスクを支給されず、普通のマスクで作業していました。
また、粉じん作業には1日の労働時間に制限があることも知りませんでした。
私たちは、時間外労働で1日2時間以上、粉じん作業を行うことがありました。
後で分かったことですが、これは法律違反だったのです。
- 粉じん作業の時間外労働は1日2時間が上限
- 防じんマスクの着用が義務付けられている
- じん肺健康診断の実施が必要





労働基準法第36条第6項第1号では、有害業務(粉じん作業など)の時間外労働は1日2時間が上限と定められています。また、粉じん障害防止規則第27条では防じんマスクの使用が義務付けられており、じん肺法第8条では じん肺健康診断の実施が求められています。
労働基準監督署の調査と会社への是正勧告
ある日、労働基準監督署の調査が入りました。
私たちは、調査員から労働時間や作業環境について質問を受けました。
初めは会社に不利なことを言って大丈夫だろうかと不安でしたが、調査員は「正直に答えてください。あなたたちの安全と健康を守るための調査です」と優しく説明してくれました。
私は、長時間労働のこと、休日出勤のこと、防じんマスクがないこと、健康診断を受けていないことなどを話しました。
他の技能実習生たちも同じように証言しました。
明らかになった会社の法律違反
- 36協定の上限時間を超えた違法な時間外労働の是正
- 月80時間を超える残業者への医師による面接指導の実施
- 粉じん作業の時間外労働を1日2時間以内にすること
- 防じんマスクの使用の徹底
- じん肺健康診断の実施
調査の結果、会社には複数の法律違反があることが分かりました。
技能実習生を含む9名の労働者に対して、36協定で定めた上限時間を超えて、月100時間を超える違法な時間外労働を行わせていたこと。
最も長い人は、月115時間の残業をしていました。
月80時間を超える残業をした労働者への医師による面接指導を実施していなかったこと。
粉じん作業について、1日2時間の上限を超えて時間外労働を行わせていたこと、防じんマスクを使用させていなかったこと、じん肺健康診断を実施していなかったこと。
これらすべてについて、労働基準監督署は会社に是正勧告を出しました。



是正勧告とは、労働基準監督署が法律違反を確認した場合に、会社に対して改善を求める行政指導です。勧告に従わない場合は、刑事事件として送検される可能性もあります。
会社の改善と労働環境の変化
是正勧告を受けた会社は、すぐに改善に取り組みました。
まず、違法な時間外労働を解消するため、労働時間の実績を日々確認するようになりました。
長時間労働になりそうな場合は、早めに把握して、残業を抑制する対策を取るようになったのです。
また、取引先に対しても、余裕を持った納期設定について協力を要請しました。
その結果、残業時間が大幅に減りました。
月80時間を超える残業をした技能実習生については、母国語で医師による面接指導を受けられるようになりました。
粉じん作業については、工場内の作業を見直して、1日の時間外労働を2時間以内としました。
防じんマスクも支給され、着用が徹底されるようになりました。
管理者によるパトロールの際に、マスク着用をチェックする項目も追加されました。
そして、じん肺健康診断が実施され、未実施者を出さないよう、チェックリストによる受診状況の管理体制が確立されました。



労働基準監督署の指導により、労働環境が改善されることは多くあります。労働者自身が声を上げることも重要ですが、第三者機関の介入が効果的な場合も少なくありません。
同じ問題を抱える技能実習生が取るべき6つのステップ
私の経験から、長時間労働や危険な作業環境で悩んでいる方に向けて、具体的な行動ステップをまとめました。
自分の労働時間を記録する
毎日の出勤時刻と退勤時刻、休憩時間、休日出勤の有無を記録しましょう。
タイムカードがあれば、そのコピーを保管してください。
会社が正確な労働時間を記録していない場合もあるため、自分でも記録を残すことが重要です。
スマートフォンのメモ機能やノートに記録するだけでも有効です。
体調不良や作業環境の問題を記録する
体調不良を感じた日時、症状、作業内容などを記録してください。
また、防じんマスクが支給されていない、換気が悪い、危険な作業をさせられているなど、作業環境の問題も記録しましょう。
写真や動画で記録できれば、さらに有力な証拠となります。
監理団体や実習実施者に相談する
技能実習生の場合、まずは監理団体や実習実施者に相談してみましょう。
労働時間が長すぎること、健康診断を受けていないこと、作業環境が危険であることなどを伝えてください。
監理団体には、技能実習生の保護や支援を行う義務があります。
ただし、監理団体が適切に対応しない場合もあるため、その場合は次のステップに進みましょう。
改善されない場合は外部機関に通報する
監理団体に相談しても改善されない場合は、労働基準監督署や外国人技能実習機構に通報してください。
通報は匿名でも可能です。
また、(法テラス)や外国人支援団体にも相談できます。
多言語対応している相談窓口もあるので、日本語に不安がある場合でも安心です。
健康診断や面接指導を受ける
会社が健康診断や面接指導を実施しない場合は、自分から受診を求めましょう。
じん肺健康診断や医師による面接指導は、会社の義務です。
もし会社が拒否する場合は、労働基準監督署に相談してください。
自分の健康を守るため、定期的な健康チェックは非常に重要です。
同僚と情報を共有し協力する
同じ職場で働く同僚と情報を共有し、協力し合うことが大切です。
一人だけの問題ではなく、多くの労働者が同じ問題を抱えている場合、より強い改善の圧力となります。
ただし、会社に知られて不利益を被ることがないよう、慎重に行動してください。
外部の支援団体や労働組合に相談することも有効です。



長時間労働や危険な作業環境は、労働者の健康と生命に関わる重大な問題です。我慢せず、適切な機関に相談することが、自分自身と同僚の安全を守ることにつながります。
まとめ:健康と安全を守るために声を上げよう
私の経験を通じて、同じような問題で悩んでいる技能実習生の方に伝えたいことがあります。
- 36協定の上限を超える残業は違法
- 粉じん作業には厳格な規制がある
- 健康診断や面接指導は会社の義務
- 労働基準監督署への通報で改善が図られる


あなたの健康と安全は、何よりも大切です。
長時間労働や危険な作業環境を我慢する必要はありません。
技能実習生という立場だからといって、不当な扱いを受け入れる必要はないのです。
日本には、労働者の権利を守るための法律や制度があります。
労働基準監督署や外国人技能実習機構、支援団体など、相談できる場所はたくさんあります。
一人で悩まず、声を上げてください。
そして、同じように困っている仲間がいたら、助け合いましょう。
私たちには、安全で健康的な環境で働く権利があります。








