
正社員から有期雇用への契約変更と雇止め
私は工場で正社員として働いていた外国人労働者です。
入社時は正社員として採用され、3か月の試用期間を無事に終えました。
しかし、本採用後まもなく、会社から突然「3か月契約の有期雇用に変更する」と告げられました。
そして、その3か月後、契約期間満了で雇止めの通知を受けたのです。
正社員として働くつもりで日本に来たのに、なぜこんなことになったのか、納得できませんでした。
労働センターに相談し、自分の権利を守るために行動を起こすことにしました。

| 国 | フィリピン |
|---|---|
| 日本語能力 | N2程度 |
| 職種 | 工業製品製造業(技能実習2号) |
| 就職ルート | 技能実習生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 言語・文化の違いによるトラブル |
| 参照元 | 令和6年東京都の労働相談の状況 – 外国人労働相談 |
まつむら正社員から有期雇用への一方的な契約変更は、労働者の同意なく行うことはできません。また、雇止めについても、更新を期待させる事情がある場合は、解雇と同様の厳格な要件が求められます。納得できない場合は、労働センターや(法テラス)に相談しましょう。
正社員採用から突然の契約変更までの経緯
正社員として採用され試用期間を終えた
私は技能実習を終えた後、ある工場に正社員として採用されました。
雇用契約書には「正社員(期間の定めなし)」と明記されており、試用期間は3か月と書かれていました。
試用期間中、私は一生懸命働きました。
遅刻や欠勤もなく、上司からの指示もしっかり守り、製品の品質検査では高い評価を受けていました。
3か月後、上司から「試用期間は問題なく終了しました」と言われ、正式に本採用となりました。
私は安心して、これから長く働けると思っていました。



試用期間は、労働者の適性を見極めるための期間です。試用期間満了後に本採用となった場合、正社員としての雇用契約が成立したと考えられます。
本採用後の一方的な契約変更の通告
本採用から2週間ほど経ったある日、突然上司に呼ばれました。
「会社の業績が厳しいため、契約を見直すことになった。今後は3か月ごとの契約更新とする」と言われたのです。
私は驚いて、「正社員として採用されたのではないですか」と尋ねました。
上司は「会社の判断だ。あなたの仕事ぶりを見て判断した結果、3か月契約が適切だと考えた」と言いました。
その場で新しい雇用契約書に署名を求められました。
内容をよく理解できないまま、「署名しないと仕事を続けられない」と思い、署名してしまいました。
後で友人に相談したところ、「それはおかしい。会社が勝手に契約を変えることはできない」と言われ、不安になりました。



労働契約の内容を変更するには、労働者と使用者の合意が必要です。一方的な変更は原則として無効です。また、労働者の真意に基づかない同意(強要された署名など)も無効となる可能性があります。
3か月後の雇止め通知と納得できない思い
3か月契約に変更された後も、私は真面目に働き続けました。
契約更新されることを期待していたのです。
しかし、契約期間満了の1週間前、上司から「契約は更新しない。契約期間満了で退職してもらう」と告げられました。
理由を尋ねると、「総合的に判断した結果」とだけ言われました。
私は納得できませんでした。
遅刻や欠勤もなく、上司からも仕事ぶりを褒められたこともあったのに、なぜ契約を更新してもらえないのか。
そもそも、正社員として採用されたはずなのに、なぜ3か月契約に変更されたのか。
友人から労働センターのことを聞き、相談に行くことにしました。



雇止めとは、有期労働契約の期間満了により、契約を更新しないことです。しかし、更新を期待させる事情がある場合や、実質的に期間の定めのない契約と同視できる場合は、客観的に合理的な理由がなければ無効となります。
労働センターで分かった私の権利と会社の問題
労働センターの相談員に、これまでの経緯を詳しく説明しました。
相談員は私の話を丁寧に聞き、会社の対応には複数の問題があると指摘してくれました。
一方的な契約変更の違法性
- 労働者の真の同意なく契約内容を変更している
- 変更の合理的な理由が説明されていない
- 労働者に不利な変更を一方的に押し付けている


相談員によると、労働契約の内容を変更するには、労働者と使用者の合意が必要です。
私の場合、会社は「署名しないと仕事を続けられない」という雰囲気を作り、実質的に強要していました。
これは真の同意とは言えず、契約変更は無効と主張できる可能性があります。
また、会社は契約変更の合理的な理由を説明していません。
「会社の業績が厳しい」と言いながら、具体的な説明はなく、他の正社員は契約変更されていませんでした。



労働契約法第8条では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と定められています。一方的な変更は無効です。
雇止めが無効となる可能性
雇止めが制限される場合
- 更新を期待させる事情がある場合
- 過去に何度も更新されている
- 更新を前提とした発言があった
- 実質的に無期契約と同視できる場合
- 長期間継続して雇用されている
- 正社員と同じ業務を行っている
相談員は、雇止めの問題についても説明してくれました。
私の場合、元々は正社員として採用されており、一方的に3か月契約に変更された経緯があります。
これは、実質的に正社員としての雇用関係が続いていると考えられ、雇止めには解雇と同様の厳格な要件が求められます。
また、仮に3か月契約が有効だとしても、会社は「総合的に判断した」というだけで、具体的な理由を説明していません。
このような曖昧な理由での雇止めは、無効となる可能性があります。



労働契約法第19条では、一定の場合に雇止めを制限しています。客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない雇止めは無効です。
会社側の主張と労働センターの調整
労働センターは、会社に事情を聴くことにしました。
会社側は次のように説明したそうです。
「相談者の能力や勤務態度から、継続雇用は難しいと判断した。相談者には説明の上で3か月契約に変更し、契約期間満了で円満に退社したと思っていた。しかし、後から復帰したいと言い出して困っている」
労働センターの相談員は、会社側の説明には矛盾があることを指摘しました。
試用期間中は問題がなかったのに、本採用後すぐに契約変更したこと、具体的な問題点を説明していないこと、外国人労働者との意思疎通を丁寧に行っていないことなどです。
相談員は、会社に対して、一方的な契約変更や雇止めの法的リスクを説明しました。
その結果、会社は一定の条件での合意退職を前提に調整する方向となりました。



日本語での意思疎通に不安を抱える外国人労働者の雇用管理には、特に丁寧な対応が必要です。曖昧な説明や一方的な決定は、後のトラブルにつながります。
同じ問題を抱える外国人労働者が取るべき6つのステップ
私の経験から、同じような状況にある方に向けて、具体的な行動ステップをまとめました。
雇用契約書の内容を確認し保管する
まず、最初に交わした雇用契約書を確認してください。
「正社員(期間の定めなし)」と書かれているか、試用期間の記載があるかなどを確認します。
もし契約変更の書類に署名した場合も、その書類を保管しておきましょう。
これらの書類は、後で権利を主張する際の重要な証拠となります。
契約変更や雇止めの理由を書面で求める
会社から契約変更や雇止めを告げられた場合、その理由を書面で説明してもらいましょう。
口頭での説明だけでは、後で「言った」「言わない」のトラブルになります。
「契約変更(または雇止め)の理由を書面で説明してください」と丁寧に依頼してください。
会社とのやり取りを記録に残す
会社との話し合いの日時、場所、誰と話したか、どんな内容だったかをメモに残しましょう。
可能であれば、会話を録音することも検討してください。
日本では、自分が参加している会話を録音することは違法ではありません。
ただし、録音していることを事前に伝えておくと、より誠実な対応と言えます。
労働センターに早めに相談する
納得できない契約変更や雇止めを告げられたら、すぐに労働センターや(法テラス)に相談しましょう。
一人で悩んでいても解決しません。
専門家のアドバイスを受けることで、適切な対応方法が分かります。
相談は無料で、外国語対応している機関もあります。
あっせんや労働審判の手続きを検討する
労働センターでは、あっせん(話し合いによる解決)の手続きを行っています。
第三者が間に入ることで、話し合いがスムーズに進むことがあります。
あっせんで解決しない場合は、労働審判や裁判という手段もあります。
専門家と相談しながら、自分に合った方法を選びましょう。
合意退職の条件を慎重に検討する
私のケースでは、会社が雇止め通知を撤回し、合意退職という形になりました。
退職日までは出勤不要とし、給与は全額支払われるという条件でした。
合意退職の条件は、慎重に検討してください。
退職金の支払い、離職票の退職理由(会社都合か自己都合か)、未払い賃金の精算など、重要なポイントを確認しましょう。
納得できる条件であれば、書面で合意内容を残すことが大切です。



一方的な契約変更や雇止めは、労働者の生活に大きな影響を与えます。一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが、問題解決の第一歩です。
まとめ:納得できない契約変更や雇止めには毅然と対応を
私の経験を通じて、同じような悩みを持つ外国人労働者の方に伝えたいことがあります。
- 一方的な契約変更は労働者の同意がなければ無効
- 雇止めにも客観的に合理的な理由が必要
- 納得できない場合は労働センターに相談する
- 書面で記録を残し証拠を保管することが重要


会社の言うことをそのまま受け入れる必要はありません。
納得できないことがあれば、きちんと説明を求め、専門家に相談してください。
日本で働く外国人労働者にも、日本人と同じ労働者としての権利があります。
言葉の壁や立場の弱さを理由に、不当な扱いを受け入れる必要はないのです。
一人で悩まず、労働センターや支援団体に相談してください。
そして、同じような問題で困っている仲間がいたら、助け合いましょう。








