
コロナ禍の解雇で退職手続きに困った話
私は海外企業の日本法人で、受付と事務を担当する唯一の正社員でした。
在留資格は「技術・人文知識・国際業務」で、社長の通訳や書類作成など幅広い業務を一人でこなしていました。
ある日、社長から突然「会社を辞めてもらうことになった」と告げられました。
新型コロナウイルスの影響で会社の業績が悪化し、パートタイム労働者は既に解雇されていたので、ある程度予想はしていました。
しかし、社長は日本語を片言しか話せず、退職後の手続きや賃金の支払いがどうなるのか、とても不安でした。

| 出身国 | – |
|---|---|
| 日本語能力 | N1程度 |
| 職種 | 工業製品製造業(技術・人文知識・国際業務) |
| 就職ルート | 母国からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 言語・文化の違いによるトラブル |
| 参照元 | 令和2年東京都の労働相談の状況 – 外国人労働相談 |
まつむら海外企業の日本法人では、経営者が外国人で日本語に不慣れな場合があります。このようなケースでは、退職手続きや社会保険関連の書類作成が滞りやすく、双方に支援が必要となることがあります。相談窓口では、労使双方をサポートすることも可能です。
突然の解雇通告から不安が募るまでの経緯
コロナ禍での業績悪化と解雇の予感
2020年に入り、新型コロナウイルス感染症が世界中に広がりました。
私が働いていた会社も例外ではなく、4月から事実上の休業状態に入りました。
社員は自宅待機となり、私も会社に行く日がほとんどなくなりました。
パートタイムで働いていた数人は、既に解雇されていました。
正社員は私一人だけでしたが、このままでは自分もいつか解雇されるのではないかと、心の片隅で感じていました。



コロナ禍では多くの企業が業績悪化に直面し、事業縮小や撤退を余儀なくされました。特に海外との取引が主な企業は、渡航制限や需要減少の影響を大きく受けました。
言葉の壁と手続きへの不安
解雇を告げられた時、私が最初に感じたのは怒りではなく不安でした。
社長は母国語と英語しか話せず、日本語は片言程度です。
これまで会社の事務は全て私が処理していたため、私がいなくなった後、退職に必要な書類はどうなるのだろうと心配になりました。
離職票、源泉徴収票、社会保険の資格喪失届など、日本語で作成しなければならない書類がたくさんあります。
社長一人では到底処理できないことは分かっていました。
自分の退職手続きが滞れば、失業手当の申請や次の就職活動にも支障が出ます。



退職時には、離職票、源泉徴収票、健康保険・厚生年金の資格喪失証明書など、複数の書類が必要です。これらの書類がないと、失業手当の申請や国民健康保険への加入手続きができません。
相談窓口で整理できた現状と不安
このままでは何も進まないと思い、外国人向けの相談センターに相談することにしました。
センターの担当者に事情を説明したところ、私の状況と不安点を整理してくれました。
解雇自体はやむを得ないとしても、退職に伴う手続きは正しく行われる必要があるということ。
そして、社長も日本語の書類作成に困っている可能性があり、双方をサポートする形で解決できるかもしれないということでした。



相談窓口では、労働者だけでなく事業主側の支援を行うこともあります。特に言語の問題で手続きが滞っている場合、双方にとってメリットのある解決策を提案できることがあります。
センターの介入で明らかになった状況
センターの担当者が通訳を介して社長から事情を聴いてくれました。
社長が抱えていた困難
- 日本語の読み書きができない
- 事務を担当していた社員がいなくなり書類作成ができない
- 海外本部の方針で日本からの事業撤退が決定


社長からの回答は予想外のものでした。
コロナの影響で4月から会社は休業状態で、海外本部の方針により日本からの事業撤退が決まったとのこと。
そして、日本語の読み書きができないため、私がいない現在では様々な必要書類の作成もままならず、センターに支援をお願いしたいと言っていたのです。
社長も困っていたのだと知り、少しほっとしました。



外国人経営者にとって、日本の労働法規や社会保険制度は非常に複雑です。従業員の退職手続き、事業撤退に伴う届出など、日本語での書類作成が必要な場面は多く、専門家の支援が不可欠な場合があります。
双方をサポートする形での解決
退職時に必要な主な手続き先
- ハローワーク
- 離職票の発行、失業手当の手続き
- 年金事務所
- 厚生年金の資格喪失届
- 市役所
- 住民税の手続き、国保加入など
センターは、英語でのコミュニケーションが可能な弁護士の立会いのもと、私と社長の間で退職関係書類の作成を支援してくれました。
離職票、源泉徴収票、社会保険の資格喪失届など、必要な書類を一つひとつ確認しながら作成しました。
ハローワーク、年金事務所、市役所への手続きについても具体的に助言してもらい、滞りなく全ての手続きを完了することができました。



退職手続きでは、会社側と労働者側の両方に義務と権利があります。相談窓口が双方の間に入ることで、対立ではなく協力の形で問題を解決できることがあります。特に言語の壁がある場合、第三者の支援は非常に有効です。
円滑に退職するための行動計画
私の経験をもとに、同じような状況にある方に向けて具体的な行動計画をまとめました。
解雇の経緯と条件を文書で確認する
解雇を告げられたら、まずその理由と条件を確認しましょう。
退職日はいつか、未払いの賃金はないか、退職金の有無などを口頭だけでなく文書で確認することが重要です。
言語の問題がある場合は、メールやメッセージなど記録に残る形でやり取りしましょう。
退職に必要な書類のリストを作成する
退職時に会社から受け取るべき書類を整理しましょう。
離職票、源泉徴収票、健康保険・厚生年金の資格喪失証明書は必須です。
これらがないと、失業手当の申請や確定申告、国民健康保険への切り替えができません。
相談窓口に連絡して支援を依頼する
会社との間で手続きがスムーズに進まない場合、または言語の問題がある場合は、外国人労働者向けの相談窓口に相談しましょう。
相談窓口では、通訳を介した交渉や書類作成の支援を受けることができます。
会社側も困っている場合は、双方をサポートする形で解決できることがあります。
会社と協力して退職書類を作成する
相談窓口の支援を受けながら、会社と協力して必要な書類を作成します。
対立するのではなく、お互いの利益のために協力する姿勢が大切です。
会社にとっても、適切に手続きを完了することは法的義務であり、トラブル回避につながります。
ハローワークで失業手当の手続きをする
離職票を受け取ったら、できるだけ早くハローワークで失業手当の手続きをしましょう。
会社都合の解雇であれば、待機期間なしで失業手当を受給できます。
在留資格の種類によっては、失業手当を受給しながら就職活動ができます。
年金事務所と市役所で各種届出を行う
厚生年金から国民年金への切り替え、健康保険から国民健康保険への切り替えなど、退職に伴う届出を行います。
届出には期限があるものもあるため、退職後すみやかに手続きしましょう。
また、入国管理局への届出(所属機関の変更届)も14日以内に行う必要があります。
次の就職先が決まるまでの間、在留資格に関する相談も専門家にしておくと安心です。



退職後の手続きは複数の機関にまたがり、期限があるものも多いです。相談窓口では、どの手続きをいつまでに行うべきか、具体的なアドバイスを受けることができます。
まとめ:言葉の壁を乗り越えるために
解雇は誰にとっても辛い経験ですが、特に外国人労働者にとっては手続きの複雑さが加わり、より大きな不安を感じることがあります。
私の場合は、会社も困っていたという特殊な状況でしたが、だからこそ協力して解決することができました。
- 外国人経営者の会社では言語の問題で手続きが滞ることがある
- 相談窓口は労働者だけでなく会社側もサポートできる
- 退職時には複数の機関への届出が必要
- 対立ではなく協力の姿勢がスムーズな解決につながる


これからは新しい仕事を探しながら、次のステップに進んでいきます。
言葉の壁があっても、適切な支援を受ければ問題は解決できるということを、今回の経験で学びました。
同じような状況で困っている方は、ぜひ相談窓口を利用してください。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りることで、必ず道は開けます。








