
工事現場で大ケガ、会社が10万円で事故を隠蔽しようとしている
私は外国人で、「日本人の配偶者等」の在留資格を持っています。
工事現場で働いていたある日、足場が壊れて転落し、頭の骨を折る大ケガをしました。
会社は「これは病院代と、早く治るようにという気持ちです」と言って10万円をくれましたが、それ以上のお金は出そうとしません。
後で分かったことですが、足場が壊れたのは会社がコスト削減のために強度不足の足場を使ったからでした。
しかし、会社はこの事故の責任を取ろうとせず、労働基準監督署にも報告しないつもりのようです。

| 出身国 | – |
|---|---|
| 日本語能力 | N3程度 |
| 職種 | 建設業(日本人の配偶者等) |
| 就職ルート | その他の在留資格からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 生活支援・住環境の問題 |
| 参照元 | 法テラス – 「仕事をしているときに、大きなケガをしました。しかし、会社は責任を取ろうとしません。」 |
まつむら仕事中のケガは「労働災害(労災)」として、労災保険から治療費や休業補償などを受け取ることができます。会社が事故を隠そうとしたり、労災申請に協力しなくても、労働者本人が直接労働基準監督署に申請できます。また、会社が事故を報告しないことは法律違反であり、罰則の対象となります。
足場崩落事故が起きるまでの経緯
いつもと違う不安定な足場での作業
事故が起きた日は、いつもとは違う現場でした。
朝、現場に着いたとき、足場がいつもより細くて、揺れやすいと感じました。
「これは大丈夫ですか?」と現場監督に聞きましたが、「問題ない、早く作業を始めろ」と言われました。
不安でしたが、仕事を断ることもできず、足場に上がりました。
作業を始めて30分ほど経った頃、足場が大きく揺れて、支柱が外れる音が聞こえました。
次の瞬間、足場が崩れて、私は約3メートル下に落ちました。



労働安全衛生法では、事業者は労働者の安全を確保するために必要な措置を講じる義務があります。適切な強度を持たない足場を使用させることは、安全配慮義務違反にあたります。作業前に不安を訴えたにもかかわらず作業を強制されたことも、重要な証拠となります。
病院での診断と会社の対応
救急車で病院に運ばれました。
診断の結果、頭蓋骨骨折と診断され、入院が必要と言われました。
翌日、会社の社長が病院に来て、「本当に申し訳ない。これは治療費と見舞金だ」と言って封筒を渡されました。
中には10万円が入っていました。
社長は続けて「これで治療を受けてくれ。労災の手続きは会社でやっておくから」と言いました。
しかし、その後会社から労災保険の書類は一切届きませんでした。
退院後に会社に連絡すると、「もう10万円払ったから、それで終わりだ。労災は申請しない」と言われたのです。



会社が少額の見舞金を渡して労災申請をさせないようにするケースは、残念ながら珍しくありません。しかし、労災保険の給付を受ける権利は労働者に認められた法的権利であり、会社の都合で放棄させることはできません。10万円を受け取ったとしても、労災申請をする権利は失われません。
事故の真相を知って感じた不安
退院してしばらくしてから、同じ現場で働いていた同僚から連絡がありました。
彼が教えてくれたのは、あの日使われていた足場は、コストを削減するために通常より強度の低い材料で作られていたということでした。
建設業界では、足場の安全基準が厳しく決められているそうですが、会社はそれを無視していたのです。
さらに、会社は労働基準監督署に事故を報告していないことも分かりました。
同僚は「もし労基署に報告したら、会社は罰を受けるから、隠しているんだ」と教えてくれました。
私は不安になりました。
治療費だけで10万円では全く足りません。
入院費、通院費、薬代、そして働けなかった期間の給料のことを考えると、もっとお金が必要です。



労働安全衛生規則では、労働災害が発生した場合、事業者は遅滞なく労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出する義務があります。休業4日以上の災害の場合、故意に報告しなかったり虚偽の報告をすると、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
労働基準監督署で知った労災保険の制度
同僚のアドバイスで、労働基準監督署に相談に行きました。
そこで初めて、労災保険という制度について詳しく知ることができました。
労災保険から受けられる補償
- 療養補償給付:治療費の全額
- 休業補償給付:働けない期間の給料の約80%
- 障害補償給付:後遺症が残った場合の補償
- 遺族補償給付:死亡した場合の遺族への補償


労災保険は、仕事中や通勤中のケガ・病気について、国が補償してくれる制度です。
在留資格に関係なく、また、たとえ不法就労であっても労災保険の対象となります。
会社が労災保険に加入していなくても、労働者は給付を受けることができます。
保険料は全額会社が負担しており、労働者の負担はありません。



労災保険は労働者を守るための制度であり、外国人労働者も日本人と同じように保護されます。「日本人の配偶者等」の在留資格の場合、就労制限がないため、どのような仕事でも労災保険の対象となります。会社が保険料を払っていなくても、労働者が給付を受ける権利は変わりません。
会社が協力しなくても申請できる
- 労働者本人が直接労働基準監督署に申請できる
- 会社の証明がなくても申請可能
- 会社が労災と認めなくても、その旨を記載して提出できる
- 事故の状況や原因について詳細に説明する資料を添付する


私が一番驚いたのは、会社が協力しなくても、自分で労災申請ができるということでした。
労働基準監督署の担当者は、「給付請求書に、会社が労災と認めないことを記載して提出してください」と教えてくれました。
また、事故の状況を詳しく説明する書類や、同僚の証言、病院の診断書なども一緒に提出すると良いとアドバイスされました。



労災保険給付の請求は、労働者の権利です。会社の同意や証明は必須ではありません。会社が証明を拒否する場合は、給付請求書の事業主証明欄にその旨を記載し、事故の状況を詳しく説明した書類を添付して提出します。労働基準監督署が調査を行い、労災かどうかを判断します。
会社への責任追及と損害賠償請求
労災保険で治療費や休業補償は受けられることが分かりました。
しかし、会社の安全配慮義務違反によって事故が起きた場合、労災保険だけでなく、会社に対して損害賠償を請求できることも知りました。
安全配慮義務違反とは
労災保険と損害賠償請求の違い
- 労災保険
- 治療費や休業補償など基本的な補償
- 迅速に給付される
- 精神的苦痛への慰謝料は含まれない
- 損害賠償請求
- 労災保険でカバーされない損害も請求できる
- 精神的苦痛への慰謝料も含まれる
- 会社の過失を証明する必要がある
会社には、労働者が安全に働けるように環境を整える「安全配慮義務」があります。
今回の事故では、会社が以下のような義務違反をしています。
- 強度不足の足場を使用した
- 作業員の不安の訴えを無視した
- 労働基準監督署への報告義務を果たさなかった
これらは明らかな安全配慮義務違反であり、会社に対して損害賠償を請求できる根拠となります。



労働契約法第5条では、使用者は労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)があると定められています。会社がこの義務に違反して労働者がケガをした場合、労災保険とは別に、民法上の不法行為または債務不履行として損害賠償を請求できます。弁護士に相談すると良いでしょう。
労働基準監督署への申告
- 会社が労働者死傷病報告を提出していないこと
- 安全基準を満たさない足場を使用したこと
- 作業員の安全への懸念を無視したこと
- 適切な安全対策を講じなかったこと


会社が事故を報告していないことは、法律違反です。
労働基準監督署に申告することで、会社への調査や指導、場合によっては罰則が科される可能性があります。
申告は匿名でも可能ですが、詳しい状況を説明するために、実名での申告が推奨されます。
労働基準監督署は申告者の情報を会社に明かさないよう配慮してくれます。



労働基準法第104条では、労働者は事業場に労働基準法違反の事実がある場合、労働基準監督署に申告することができると定められています。この申告を理由に会社が労働者を解雇したり不利益な取扱いをすることは禁止されています。申告により、監督署が会社を調査し、是正勧告や指導を行います。
労災申請と会社への対応の具体的手順
労働基準監督署での相談を通じて、私が今すべきことが明確になりました。
事故の状況と証拠を整理する
まず、事故が起きた日時、場所、状況を詳しく記録します。
現場監督に不安を伝えたこと、足場の状態、事故の瞬間の状況などを時系列で整理します。
病院の診断書、レントゲン写真、治療費の領収書などの医療記録も集めます。
可能であれば、同僚の証言や現場の写真なども用意します。
労災保険の給付請求書を入手する
会社の所在地を管轄する労働基準監督署に行き、「療養補償給付請求書」と「休業補償給付請求書」を入手します。
記入方法が分からない場合は、窓口で相談しながら記入できます。
外国語の通訳が必要な場合は、事前に連絡しておくと対応してもらえることもあります。
給付請求書を記入して提出する
給付請求書には、会社の証明欄がありますが、会社が記入を拒否する場合は空欄のままで構いません。
その場合、「事業主が労災と認めないため、証明を受けることができませんでした」と記載します。
事故の状況を説明する別紙を添付し、整理した証拠書類とともに提出します。
治療を受けた病院にも、労災保険用の診断書を作成してもらいます。
会社の違反行為を申告する
弁護士に相談する
労災保険でカバーされない損害(精神的苦痛への慰謝料など)について、労働問題に詳しい弁護士に相談します。
会社の安全配慮義務違反を証明し、適切な損害賠償を請求するには、専門家のサポートが必要です。
弁護士費用が心配な場合は、法テラスの民事法律扶助制度の利用を検討します。
治療に専念しながら調査に協力する
労働基準監督署が会社を調査する際、状況説明を求められることがあります。
正直に、詳しく説明することが重要です。
同時に、医師の指示に従って治療に専念します。
後遺症が残る可能性がある場合は、障害補償給付の申請も視野に入れておきます。



労災申請と損害賠償請求は別の手続きです。労災申請は迅速に行い、治療費や休業補償を確保することが最優先です。その後、弁護士と相談しながら、会社に対する損害賠償請求を検討します。両方を並行して進めることが可能です。
まとめ:同じ状況にある外国人労働者へのメッセージ
仕事中にケガをして、会社が責任を取ろうとしない状況は、とても不安で辛いものです。
しかし、諦める必要はありません。
- 仕事中のケガは労災保険の対象で、在留資格に関係なく補償を受けられる
- 会社が協力しなくても、労働者本人が直接労災申請できる
- 会社の安全配慮義務違反がある場合、労災保険とは別に損害賠償請求が可能
- 会社が事故を報告しないことは法律違反で、労働基準監督署に申告できる


私はこれから、労働基準監督署での手続きと、弁護士への相談を進めていきます。
少額の見舞金を渡されても、それで終わりにしてはいけません。
労働者には正当な補償を受ける権利があります。
外国人だからといって、権利が制限されることはありません。
もし同じような状況にある方がいたら、一人で悩まず、労働基準監督署や法テラス、外国人支援団体などに相談してください。
私たちの安全と権利を守るため、勇気を持って声を上げましょう。










