
退職時の秘密保持誓約書は拒否できる?
私は卸売・小売業で通訳と営業を担当してきた外国人です。
在留資格は「技術・人文知識・国際業務」で、日本語でのビジネスコミュニケーションも問題ありませんでした。
しかし、会社から理不尽な業務指示を受け続けた結果、適応障害を発症してしまいました。
遅刻や欠勤が増え、退職を決意して退職届を提出したところ、会社から「秘密保持に関する誓約書にサインしろ」「欠勤分の賃金を返還しろ」と求められました。
これらの要求に納得がいかず、相談窓口に助けを求めました。

| 国 | – |
|---|---|
| 日本語能力 | N2程度 |
| 職種 | 工業製品製造業(技術・人文知識・国際業務) |
| 就職ルート | 留学生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 言語・文化の違いによるトラブル |
| 参照元 | 平成27年東京都の労働相談の状況 – 外国人労働相談 |
まつむら退職時に会社から秘密保持誓約書へのサインを求められることがありますが、労働者が拒否している状況で強制することは法的に困難です。また、欠勤分の賃金返還についても、そもそも有給休暇や傷病手当金の対象となる可能性があります。一つずつ整理して対応しましょう。
適応障害を発症してから退職を決意するまでの経緯
理不尽な業務指示で心身のバランスを崩した
入社当初は、通訳と営業の仕事にやりがいを感じていました。
しかし、次第に会社からの業務指示に疑問を感じるようになりました。
明らかに私の担当外の仕事を押し付けられたり、達成不可能なノルマを設定されたりすることが増えていきました。
上司に相談しても「それも仕事だ」と取り合ってもらえず、次第に心身のバランスを崩していきました。
病院を受診したところ、「適応障害」と診断されました。
朝起きても体が動かず、遅刻や欠勤が増えてしまいました。



会社が主張する「正当な業務指示」が本当に適切なものかは、客観的な判断が必要です。業務の範囲を超えた指示や、達成不可能な目標設定は、パワーハラスメントに該当する可能性があります。心身に不調を感じたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
退職届を出したら予想外の要求をされた
このままでは回復できないと感じ、退職を決意しました。
退職届を提出したところ、会社から二つの要求を突き付けられました。
一つ目は、秘密保持に関する誓約書にサインすること。
二つ目は、欠勤分の賃金を会社に返還すること。
誓約書には、退職後も会社の情報を一切口外しないこと、違反した場合は損害賠償を請求されることなどが書かれていました。
正直なところ、内容に不安を感じ、すぐにサインする気にはなれませんでした。
また、欠勤分の賃金返還についても、病気で休んでいたのになぜ返さなければならないのか理解できませんでした。



秘密保持誓約書は、企業秘密を守るために退職者に署名を求めるものですが、署名は義務ではありません。また、病気による欠勤については、有給休暇の消化や傷病手当金の受給が可能な場合があります。会社の要求をそのまま受け入れる必要はありません。
会社側の主張と私が感じた違和感
相談窓口の担当者が会社に状況を確認してくれました。
会社側は、私が「嫌がらせ」と主張していることについて、「正当な業務指示にすぎない」と述べました。
確かに、何が「正当な業務指示」で何が「嫌がらせ」なのか、線引きは難しい部分もあります。
しかし、私が適応障害を発症するほど追い詰められていた事実は変わりません。
会社は私の健康状態を把握していながら、十分な配慮をしてくれなかったのです。
退職するにしても、不利な条件を押し付けられるのは納得がいきませんでした。



業務上の指示であっても、労働者の健康に配慮する義務が会社にはあります。特に、労働者が心身の不調を訴えている場合は、業務量の調整や休養の確保など、適切な対応を取る必要があります。この義務を怠った場合、会社側の責任が問われる可能性もあります。
相談窓口で知った私の権利と交渉の結果
相談窓口の担当者から、私が知らなかった権利について教えてもらいました。
発見①:秘密保持誓約書のサインは強制できない
- 署名は法的な義務ではなく、拒否することができる
- 労働者が拒否している状況での強制は法的に困難
- 署名しなくても退職手続きは進められる


秘密保持誓約書へのサインは、法的な義務ではありません。
担当者が会社に対して「労働者が拒否している状況でのサインの強制は法的には困難である」と伝えてくれました。
もちろん、企業秘密を漏洩した場合は別途法的責任を問われる可能性はあります。
しかし、退職の条件として誓約書への署名を強制されることはないのです。



なお、入社時に秘密保持に関する誓約をしている場合は、その効力は退職後も続くことがあります。ただし、退職時に新たな誓約書へのサインを拒否しても、それを理由に退職金の不払いや退職手続きの遅延は認められません。
発見②:病欠期間は傷病手当金の対象になる可能性
欠勤時の収入補償の選択肢
- 有給休暇の消化
- 未消化の有給休暇があれば欠勤日に充当可能
- 100%の給与が保障される
- 傷病手当金
- 連続4日以上の病欠で申請可能
- 標準報酬日額の約3分の2が支給される
欠勤分の賃金返還を求められていましたが、そもそも病気による欠勤については傷病手当金を受給できる可能性があることを知りました。
傷病手当金とは、病気やケガで仕事を休んだときに、健康保険から支給される給付金です。
連続して4日以上休んでいれば、4日目以降の分について受給できます。
担当者の交渉により、会社が傷病手当金の手続きを行うことで合意に達しました。



傷病手当金は、健康保険に加入している労働者が対象です。申請には医師の証明が必要ですが、適応障害で通院していた場合はその診断書を使えます。退職後も条件を満たせば受給を継続できる場合があるので、加入している健康保険組合に確認しましょう。
私が今すぐ行動すべき6つのステップ
相談窓口との交渉を経て、最終的に私と会社は以下の条件で合意に達しました。
医師の診断書を取得する
適応障害の診断を受けている医療機関から、診断書を取得しましょう。
この診断書は、傷病手当金の申請や、病気による欠勤の正当性を証明するために必要です。
会社からの要求と経緯を記録する
秘密保持誓約書へのサインを求められた日時、担当者、具体的な発言内容を記録します。
賃金返還の要求についても、金額や根拠を書面で確認しておきましょう。
秘密保持誓約書の内容を専門家に確認する
誓約書の内容に不安がある場合は、弁護士や労働相談窓口で内容を確認してもらいましょう。
過度に広範な秘密保持義務や、不当な違約金条項が含まれていないかチェックすることが大切です。
納得できない場合は署名を拒否することができます。
傷病手当金の申請手続きを進める
病気で連続4日以上休んでいる場合、傷病手当金を申請できます。
申請書は健康保険組合のウェブサイトからダウンロードできます。
医師の証明欄と会社の証明欄があるため、会社の協力が必要になります。
遅刻欠勤分の賃金を精査する
会社から返還を求められている金額が正確かどうか、給与明細と照らし合わせて確認します。
有給休暇が残っている場合は、遡って充当できる可能性があります。
合意内容を書面で確定させる
会社との交渉で合意した内容は、必ず書面にまとめて双方で署名しましょう。
退職日、秘密保持誓約書の取り扱い、賃金の精算方法、傷病手当金の手続きなど、すべての項目を明記します。
口約束だけでは後からトラブルになる可能性があります。
まとめと読者へのメッセージ
会社からの理不尽な要求に直面したとき、外国人として日本で働く私たちは特に不安を感じやすいものです。
私も最初は、秘密保持誓約書にサインしなければ退職できないのではないかと心配しました。
- 秘密保持誓約書へのサインは法的義務ではなく、拒否することができる
- 病気による欠勤は傷病手当金の対象になる可能性がある
- 会社の要求をそのまま受け入れる必要はなく、交渉の余地がある
- 合意内容は必ず書面で確定させることが重要


相談窓口の力を借りて交渉した結果、秘密保持誓約書の提出は不要となり、傷病手当金の手続きも会社が行ってくれることになりました。
円満に退職することができ、今は体調回復に専念しています。
もし同じような状況で悩んでいる方がいたら、会社の言いなりになる必要はありません。
専門家に相談して、自分の権利を守りましょう。








