
妊娠報告で退職勧奨された私が育児休業を取得するまで
私はベトナムから日本に来て、レストランのホールスタッフとして働いていました。
仕事にも慣れ、新しい生命を授かったことを喜んでいた矢先、思いもよらない出来事が起こりました。

| 出身国 | ベトナム |
|---|---|
| 日本語能力 | N2程度 |
| 職種 | 外食業(技術・人文知識・国際業務) |
| 就職ルート | 留学生からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 言語・文化の違いによるトラブル |
| 参照元 | 平成23年東京都の労働相談の状況 – 外国人労働相談 |
まつむら妊娠は本来おめでたいことなのに、なぜ退職を迫られなければならないのでしょうか。この体験談を通じて、同じような状況で悩んでいる方々に正しい知識をお伝えします。
社長に妊娠を報告した日のことは、今でも鮮明に覚えています。
「妊娠したなら会社を辞めて欲しい」という言葉に、私は日本の法律をよく知らなかったため、妊娠したら退職しなければならないと勘違いしてしまいました。



妊娠を理由とした退職勧奨は、男女雇用機会均等法に違反する行為です。労働者には育児休業を取得する権利があり、それを理由に不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。
問題発生までの経緯
初期段階の問題発生
妊娠が分かり、喜びと共に不安も感じていました。
日本での生活はまだ2年ほどで、妊娠した場合に会社でどのような手続きが必要なのか、詳しく知りませんでした。
職場の同僚に相談しようかとも思いましたが、まずは社長に報告するべきだと考えました。
社長室に呼ばれ、妊娠したことを伝えると、社長の表情が一変しました。
「妊娠したなら会社を辞めて欲しい」と、はっきりと告げられたのです。
私は驚き、言葉が出ませんでした。
母国では妊娠しても働き続ける女性が多いことは知っていましたが、日本の文化や法律は違うのかもしれないと思い、「3か月後に辞めます」と答えてしまいました。
今思えば、その場で詳しく聞くべきだったのですが、突然のことで混乱していました。



妊娠を理由とした退職勧奨は違法です。育児介護休業法により、労働者は育児休業を取得する権利があり、妊娠・出産を理由に解雇や退職強要をすることは禁止されています。外国人労働者の方は、日本の法律を知らないことを利用されるケースがあるため注意が必要です。
状況悪化と決断
その日の夜、同じベトナム出身の友人に電話で相談しました。
友人は「え、それはおかしいよ!日本では妊娠しても働けるし、育児休業という制度があるはずだよ」と教えてくれました。
翌日、インターネットで調べてみると、日本では妊娠を理由に退職する必要はなく、むしろ育児休業を取得する権利があることが分かりました。
私は社長に騙されていたのかもしれないと不安になりました。
しかし、既に退職すると答えてしまったため、今更撤回できるのだろうかと悩みました。
赤ちゃんのためにも経済的な安定が必要です。
せめて育児休業を取りたいと思い、労働相談センターに相談することを決意しました。



一度退職に同意してしまった場合でも、それが会社からの圧力や誤った情報による場合、撤回できる可能性があります。労働相談センターや(法テラス)などに相談することで、適切な対応方法を知ることができます。
不安・疑問の明確化
労働相談センターへ行く前に、自分の状況を整理しました。
最も不安だったのは、既に退職すると答えてしまったことでした。
また、育児休業を取得するための条件や手続きについても分かりませんでした。
友人から「あっせん」という制度があると聞きましたが、具体的にどのようなものか理解できていませんでした。
また、会社が拒否した場合はどうなるのか、外国人でも同じように保護されるのかという疑問もありました。



育児休業は、原則として子が1歳に達するまで取得できます。一定の条件を満たせば最長2歳まで延長可能です。外国人労働者も日本人労働者と同様に労働法の保護を受けるため、国籍を理由に権利を制限されることはありません。
情報収集の結果
労働相談センターに行き、私の状況を詳しく説明しました。
相談員の方は親身になって話を聞いてくれ、私には育児休業を取得する権利があること、社長の行為は違法であることを教えてくれました。
発見①:緊急性の理解
- 妊娠を理由とした退職勧奨は男女雇用機会均等法第9条第3項に違反
- 育児休業の取得は労働者の権利であり、会社は原則拒否できない
- 外国人労働者も日本人と同じ労働法の保護を受ける


- 経済的な困窮:育児にかかる費用を賄えなくなる可能性
- 在留資格への影響:失業すると在留資格の更新に支障をきたす恐れ
- 精神的なストレス:妊娠期間中の不安定な状況による健康への悪影響
- 権利の放棄:本来受けられるべき保護や給付を受けられなくなる



妊娠・出産に関する不利益な扱いは、早急に対処する必要があります。時間が経つほど証拠の確保が難しくなり、また精神的・経済的な負担も増大します。すぐに専門機関に相談しましょう。
相談員の方は、すぐに行動を起こすべきだと強く勧めてくれました。
特に、退職予定日が近づく前に、会社との話し合いの場を設ける必要があるとのことでした。
- 労働相談センターやあっせん制度を利用して、会社との話し合いの場を設ける
- 育児休業申請書を会社に提出し、書面で記録を残す
- 社長とのやり取りを記録(メモ、メール、録音など)し、証拠を保全する


また、理想的な展開としては、会社が育児休業を認め、復職後も安心して働ける環境を整えることです。
そのためには、会社側に法的な義務を理解してもらい、建設的な話し合いを行うことが重要だと教わりました。
- 感情的にならず、冷静に事実を伝えることが重要
- 会社との交渉は必ず第三者(労働相談センターなど)を通して行う
- 口頭での約束だけでなく、必ず書面で合意内容を残す
- 育児休業給付金の申請期限や手続きも並行して確認する



あっせん制度は、労働問題を迅速かつ無料で解決するための制度です。弁護士を雇う費用がなくても利用でき、第三者が中立的な立場で双方の話し合いを仲介してくれます。外国人の方でも通訳サービスが利用できる場合があります。
発見②:代替ルートの存在
相談員の方から、もし会社が育児休業を認めない場合でも、他の選択肢があることを教えてもらいました。
労働審判や裁判という方法もありますが、まずはあっせんで解決を図るのが現実的だとのことでした。
- あっせん:労働委員会や労働局による無料の紛争解決サービス
- 労働審判:裁判所で行われる迅速な紛争解決手続き(3回以内の期日で結論)
- 民事訴訟:正式な裁判手続きによる解決(時間と費用がかかる)


各手続きの比較
- あっせん
- 費用:無料
- 期間:1〜2ヶ月程度
- 拘束力:合意すれば有効
- 労働審判
- 費用:数千円〜数万円
- 期間:2〜3ヶ月程度
- 拘束力:審判には強制力あり
- 民事訴訟
- 費用:数万円〜(弁護士費用別)
- 期間:半年〜数年
- 拘束力:判決には強制力あり
あっせんを利用するためには、申請書を提出し、期日を決める必要があります。
相談員の方は、会社側も法律違反を指摘されれば、多くの場合は話し合いに応じると教えてくれました。
- まずは最も費用と時間がかからないあっせんから始めるのが賢明
- あっせんが不調に終わった場合でも、労働審判や訴訟に進むことが可能
- 弁護士に相談する場合は、法テラスの無料相談を活用できる
- 外国人向けの労働相談窓口には、母国語対応のサービスもある



特に外国人労働者の方は、言語の壁や法律知識の不足から権利を主張しにくい立場にあります。(厚生労働省)や各都道府県の労働局には、多言語対応の相談窓口がありますので、遠慮せずに相談してください。
具体的な行動計画
相談員の方と一緒に、具体的な行動計画を立てました。
一つ一つのステップを確実に進めることで、目標を達成できると確信しました。
証拠の収集と整理
まず最初に行ったのは、これまでの出来事を時系列で整理し、証拠を集めることでした。
社長に妊娠を報告した日付、「会社を辞めて欲しい」と言われた時の状況、「3か月後に辞める」と答えた経緯などを詳しくメモにまとめました。
幸い、退職に関するやり取りの一部はメールで行われていたため、それらを全て印刷して保管しました。
また、同僚との会話で社長の発言を聞いた人がいれば、証人になってもらえる可能性もあると教わりました。
あっせん申請書の作成
相談員の方のサポートを受けながら、あっせん申請書を作成しました。
申請書には、妊娠を理由とした退職勧奨の違法性、育児休業を取得したいという希望、そして会社との話し合いを求める旨を記載しました。
日本語での書類作成に不安がありましたが、相談員の方が丁寧に添削してくれたおかげで、分かりやすい申請書を完成させることができました。
申請から約2週間後に、あっせん期日が設定されました。
育児休業申請書の提出
あっせん申請と並行して、会社に育児休業申請書を提出しました。
これは、育児休業を取得する意思を明確に示し、会社が拒否できないことを記録に残すために重要でした。
申請書は内容証明郵便で送付し、確実に会社に届いたことを証明できるようにしました。
会社からの返答はありませんでしたが、法律上、会社は育児休業の申し出を拒否できないため、申請書を提出したこと自体が重要だと説明を受けました。
あっせん期日での交渉
あっせん当日、労働センターの会議室で社長と対面しました。
第三者であるあっせん委員が立ち会ってくれたため、冷静に話し合うことができました。
センターの担当者から、妊娠を理由とした退職勧奨が男女雇用機会均等法違反であることが説明されました。
社長は当初、「既に退職することが決まっている。復職を前提としない育児休業は違法ではないか」と主張しました。
しかし、センターから「復職の判断は育児休業終了時に再度考えることにして、まず取得させてはどうか」と提案され、社長も「外国人で苦労しているのは分かるので、検討する」と答えてくれました。
合意内容の書面化
最終的に、会社は私の育児休業取得を認めることになりました。
この合意内容を、必ず書面で残すことが重要だとアドバイスを受けました。
合意書には、育児休業の開始日と終了予定日、復職後の労働条件、育児休業中の連絡方法などを具体的に記載しました。
社長と私の双方が署名し、それぞれが1部ずつ保管することにしました。
この書面があることで、後から「そんな約束はしていない」と言われる心配がなくなりました。
育児休業給付金の申請
育児休業を取得できることが確定したので、次は育児休業給付金の申請手続きを進めました。
これは、(ハローワーク)で手続きを行います。
会社から「育児休業給付受給資格確認票」と「育児休業給付金支給申請書」をもらい、必要事項を記入してハローワークに提出しました。
給付金は、休業前賃金の約67%(6ヶ月経過後は50%)が支給されるため、経済的な不安がかなり軽減されました。
また、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)も育児休業中は免除されることを知り、安心しました。
これらの手続きも、労働センターの方が丁寧に教えてくれたおかげでスムーズに進めることができました。
まとめと読者へのメッセージ
この経験を通じて、日本の労働法は外国人労働者も平等に保護していることを実感しました。
最初は不安で仕方ありませんでしたが、適切な相談先を見つけ、正しい手続きを踏むことで、権利を守ることができました。



同じような状況で悩んでいる外国人労働者の方は、決して一人で抱え込まないでください。労働相談センターや法テラス、ハローワークなど、無料で相談できる窓口がたくさんあります。言語の壁を感じる方は、多言語対応の窓口もありますので安心してください。
- 妊娠を理由とした退職勧奨は違法であり、育児休業を取得する権利がある
- 外国人労働者も日本人と同様に労働法の保護を受けることができる
- 労働相談センターやあっせん制度を活用することで、無料で問題を解決できる
- 証拠の収集と書面での記録が権利を守るために非常に重要である


私は現在、無事に育児休業を取得し、赤ちゃんとの時間を大切に過ごしています。
復職後も、同じ職場で働き続けることができる見通しです。
最初は退職を迫られて絶望的な気持ちでしたが、諦めずに行動して本当に良かったと思っています。
もしあなたが同じような状況にあるなら、まずは労働相談センターに連絡してみてください。
一人で悩む必要はありません。
あなたには権利があり、それを守るための制度が整っています。
勇気を持って一歩を踏み出すことで、きっと道は開けます。








