
残業代未払いと違法な寮費控除を受けた設備工事
私は空調設備の設置工事を行う会社で働いていた外国人技能実習生です。
在留資格は「技能実習2号」で、日本に来て1年半が経っていました。
毎月の給料を確認すると、残業をしているのに残業代が少ないことに気づきました。
また、入社時に説明を受けていなかった寮費が毎月給料から引かれていました。
おかしいと思い、外国人技能実習機構に相談したところ、労働基準監督署の調査が入りました。
調査の結果、会社には複数の労働基準法違反があることが判明しました。

| 出身国 | ベトナム |
|---|---|
| 日本語能力 | N3程度 |
| 職種 | 建設(技能実習) |
| 就職ルート | 母国からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 生活支援・住環境の問題 |
| 参照元 | 厚生労働省 – 技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和3年) |
まつむら時間外労働に対しては、通常の賃金に加えて25%以上の割増賃金を支払う必要があります。また、賃金から寮費などを控除する場合は、労使協定の締結が必要です。どちらも労働基準法で定められた重要なルールです。
残業代と寮費の問題に気づくまでの経緯
給料明細を見て感じた違和感
私は毎月かなりの時間、残業をしていました。
建設現場は工期があるので、夜遅くまで働くことも珍しくありませんでした。
ある月、給料明細をよく見てみると、残業代の計算がおかしいことに気づきました。
自分で計算した金額より、明らかに少なかったのです。
最初は「計算方法が違うのかな」と思っていましたが、毎月同じように少ないことが続きました。
同じ会社で働く日本人の先輩に聞いてみると、「うちの会社は残業代をちゃんと払っていないみたいだ」と教えてくれました。



残業代の計算方法は法律で決まっています。週40時間を超える労働に対しては、通常の時給に25%以上を上乗せした金額を支払わなければなりません。深夜(22時から翌5時)の労働にはさらに25%の上乗せが必要です。
説明なく引かれていた寮費
もう一つ気になっていたのが、毎月給料から引かれている「寮費」でした。
確かに会社の寮に住んでいましたが、入社時に寮費がいくらかかるのか、具体的な説明を受けた記憶がありませんでした。
契約書のような書類にサインした覚えもありませんでした。
日本語が分からないまま、気づいたら引かれていたという状況でした。
これは正しいのだろうかと疑問に思い、外国人技能実習機構に相談することにしました。
母国語で相談できたので、細かいことまで説明することができました。



労働基準法第24条では、賃金は全額を労働者に支払わなければならないと定められています。寮費や食費などを給料から控除するには、書面による労使協定(24協定)を締結する必要があります。協定なく控除することは違法です。
調査で明らかになった会社の違法行為
外国人技能実習機構からの通報を受けて、労働基準監督署が立入調査を行いました。
調査の結果、会社には2つの労働基準法違反があることが確認されました。
まず、時間外労働に対する割増賃金が適切に支払われていませんでした。
これは労働基準法第37条第1項に違反しています。
また、書面による労使協定なく、賃金から寮費を控除していました。
これは労働基準法第24条第1項に違反しています。
会社は2つの違反について是正勧告を受けました。



割増賃金の不払いは、労働基準法違反として罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となります。また、未払い分は遡って支払う義務があります。労働者には過去2年分(2020年4月以降は3年分)の未払い賃金を請求する権利があります。
調査で分かった賃金に関する権利
今回の経験を通じて、私は賃金に関する自分の権利について詳しく知ることができました。
適正な残業代を受け取る権利
- 時間外労働(週40時間超):25%以上の割増
- 深夜労働(22時〜翌5時):25%以上の割増
- 休日労働:35%以上の割増


残業をしたら、必ず割増賃金を受け取る権利があります。
週40時間を超えて働いた場合、通常の時給の1.25倍以上の賃金が支払われなければなりません。
夜10時から朝5時までの深夜労働には、さらに25%の上乗せが必要です。
休日に働いた場合は、35%以上の割増となります。
これは日本人も外国人も同じで、技能実習生にも当然適用されるルールです。



月60時間を超える時間外労働には、50%以上の割増賃金が必要です(中小企業は2023年4月から適用)。自分の残業時間と給料明細を照らし合わせて、正しく支払われているか確認してみてください。
賃金から控除されるものについて
- 税金や社会保険料は法律で控除が認められている
- 寮費・食費などは労使協定がないと控除できない
- 控除の内容と金額は事前に説明されるべき
- 不当な控除は返還を求めることができる
賃金は原則として全額が支払われなければなりません。
税金(所得税、住民税)や社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)は、法律で控除が認められています。
しかし、寮費や食費などを給料から引く場合は、書面による労使協定が必要です。
協定なく控除されていた場合、その金額は返還を求めることができます。



労使協定(24協定)とは、賃金から控除する項目について、会社と労働者の代表が書面で合意するものです。この協定がない状態での控除は、賃金全額払いの原則に違反します。外国人労働者にも、この原則は当然適用されます。
会社の改善と未払い賃金の精算
是正勧告を受けた後、会社は様々な改善に取り組みました。
給料明細と労働時間の記録を保管する
まず、毎月の給料明細は必ず保管してください。
また、自分の労働時間(出勤時間、退勤時間、休憩時間)も毎日メモしておきましょう。
会社のタイムカードのコピーや写真も、可能であれば保存しておくと良いでしょう。
自分で残業代を計算してみる
給料明細の残業代が正しいかどうか、自分で計算してみてください。
基本的な計算式は「時給 × 残業時間 × 1.25」です。
計算した金額と給料明細の金額を比べて、差があれば問題がある可能性があります。
控除の内容と根拠を確認する
給料から引かれている項目について、会社に説明を求めてください。
特に、寮費や食費などが引かれている場合は、労使協定があるかどうか確認しましょう。
「昔からそうしている」は理由になりません。
おかしいと思ったら相談する
未払い賃金の請求方法を知る
未払いの残業代がある場合、会社に対して支払いを請求することができます。
請求できる期間は過去2年分(2020年4月以降の分は3年分)です。
労働基準監督署に申告すると、監督署が会社に対して是正勧告を行います。
専門家の力を借りる
会社が支払いに応じない場合は、弁護士や労働組合に相談することも検討してください。
法テラスでは、無料で法律相談を受けることができます。
労働審判という制度を使えば、比較的早く問題を解決できることもあります。



私の会社では是正勧告後、不足していた割増賃金が遡って支払われました。また、寮費を控除するための労使協定が新たに締結されました。今では給料明細の内容も分かりやすく説明されるようになっています。
まとめ:自分の給料は自分で守る
私と同じように、残業代や賃金控除について疑問を持っている外国人労働者の方がいるかもしれません。
「日本語が分からないから」「仕組みが分からないから」と諦めないでください。
- 時間外労働には25%以上の割増賃金が必要
- 寮費などの控除には労使協定が必要で、協定なく控除は違法
- 未払い賃金は遡って請求することができる
- 外国人技能実習機構や労働基準監督署に相談できる


私は勇気を出して相談したことで、未払いだった残業代を取り戻すことができました。
給料明細を毎月確認し、おかしいと思ったら質問することが大切です。
あなたが働いた分の賃金は、正しく受け取る権利があります。
一人で悩まず、困ったときは専門機関に相談してください。
必ず助けてくれる人がいます。








