
PIP後の退職勧奨はパワハラ?交渉で解決金を得た体験談
私は外資系の保険会社でマネジャーとして働いていた外国人です。
在留資格は「技術・人文知識・国際業務」で、日本語でのビジネスコミュニケーションも問題なくできます。
入社直後に大きなプロジェクトを任されましたが、上司との人間関係が悪化し、様々な嫌がらせを受けるようになりました。
その後、会社からPIP(業務改善計画)を実施されました。
PIPの内容は「コミュニケーション能力」「マネジメント能力」など抽象的なものばかりでした。
結局、「改善が見られなかった」という理由で退職勧奨を受けることになったのです。

| 出身国 | – |
|---|---|
| 日本語能力 | N1程度 |
| 職種 | 宿泊(技術・人文知識・国際業務) |
| 就職ルート | 母国からの就職 |
| トラブル種別 | 労働条件に関するトラブル 就労態度に関するトラブル |
| 参照元 | 平成28年東京都の労働相談の状況 – 外国人労働相談 |
まつむらPIP(業務改善計画)は本来、従業員のパフォーマンス向上を目的とした制度です。しかし、退職に追い込むための手段として悪用されるケースもあります。PIPの内容が抽象的で達成基準が不明確な場合、それ自体がパワハラに該当する可能性があります。あなたの権利を守るために、今できることを確認しましょう。
上司からの嫌がらせからPIP実施までの経緯
入社直後から始まった上司との軋轢
私がこの保険会社に入社したのは、海外での経験を買われてのことでした。
マネジャーとして採用され、入社して間もなく大きなプロジェクトのリーダーを任されました。
最初は順調でしたが、直属の上司との関係がだんだん悪くなっていきました。
私の提案はことごとく却下され、会議では私の意見だけが無視されるようになりました。
他のマネジャーには共有される情報が、私には伝えられないこともありました。
これはパワハラではないかと思いましたが、証拠がないため我慢するしかありませんでした。



職場におけるパワーハラスメントとは、優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることを指します。情報の意図的な遮断や、会議での無視なども、状況によってはパワハラに該当する可能性があります。
突然始まったPIPと抽象的な改善項目
ある日、人事部から「業務改善計画(PIP)を実施する」と告げられました。
PIPとは、業績が振るわない従業員に対して改善の機会を与える制度です。
しかし、私に示されたPIPの内容は非常に抽象的なものでした。
「コミュニケーション能力の向上」「マネジメントスキルの改善」など、具体的な数値目標がありませんでした。
何をどこまで改善すれば合格なのか、まったく分からない状態でした。
私は必死に努力し、チームメンバーとのコミュニケーションを増やし、会議の進め方も工夫しました。
しかし数か月後、「改善は見られたが、会社の求めるレベルには達していない」と言われたのです。
そして、退職条件を提示され、退職勧奨を受けることになりました。



PIPが有効であるためには、改善すべき点が具体的で、達成基準が明確であることが必要です。「コミュニケーション能力」のような抽象的な項目だけでは、従業員が何を改善すべきか判断できません。このようなPIPは、退職に追い込むための口実として悪用されている可能性があります。
パワハラ調査の要求と会社の対応
退職勧奨を受けて、私は「これはパワハラだ」と確信しました。
上司からの嫌がらせ、抽象的なPIP、そして退職勧奨。
すべてが私を狙い撃ちにしたものだと感じ、納得がいきませんでした。
そこで、労働問題の相談窓口であるセンターに相談することにしました。
センターからは、会社に対してパワハラの事実関係の調査を求めるよう助言されました。
私は勇気を出して会社と交渉し、パワハラ調査の実施を約束させることができました。
しかし、会社が行った調査の結果は「ハラスメント行為は認められなかった」というものでした。
私にとっては到底受け入れられない結論でした。



会社のパワハラ調査は、加害者とされる上司や会社側の立場を守る方向に偏ることがあります。調査結果に納得できない場合は、労働局の「あっせん」制度を利用することができます。あっせんは、労働問題の専門家が間に入って、労使の話し合いによる解決を支援する制度です。
あっせん申請と解決への道のり
会社の調査結果に納得できなかった私は、センターに再度相談しました。
そして、労働局のあっせん制度を利用することにしました。
あっせんとは、労働問題の専門家が第三者として間に入り、話し合いによる解決を目指す制度です。



あっせん制度は無料で利用でき、労働審判や裁判に比べて手続きが簡単で時間もかかりません。ただし、あっせんはあくまで話し合いによる解決を目指すもので、会社が応じなければ成立しません。会社が話し合いに応じない場合は、労働審判や訴訟などの法的手段を検討することになります。
会社側の主張とセンターの調整
- マネジャーとしての能力が不足している
- PIPを実施したが改善が見られなかった
- 退職勧奨を受け入れない場合は解雇も検討する
- ハラスメント行為は調査の結果認められなかった
センターが会社から事情を聴いたところ、会社側は私にマネジャーとしての能力が不足していると主張しました。
PIPを実施したものの改善が見られなかったため退職勧奨を行ったとのことでした。
さらに、退職勧奨を受け入れない場合は解雇も視野に入れていると言われました。
私は不安になりましたが、センターの担当者は冷静に状況を分析してくれました。



会社が解雇を示唆してきても、すぐに応じる必要はありません。日本では解雇には厳格な要件があり、能力不足を理由とする解雇は簡単には認められません。特に、PIPの内容が抽象的で改善の機会が十分に与えられていなかった場合、解雇は無効となる可能性が高いです。
交渉の結果:有給消化と金銭補償で合意
退職条件の交渉ポイント
- 有給休暇の完全消化
- 退職日までに残っている有給休暇をすべて使い切る
- 金銭補償(解決金)
- 退職時に会社から一定の金額を受け取る
- 会社都合退職の確認
- 離職票に「会社都合」と記載してもらう
センターは私の意向を踏まえて、会社との退職条件の調整を行いました。
私としては、このまま会社に残っても精神的に辛い状況が続くと考えました。
そこで、できるだけ良い条件で退職することを目指すことにしました。
交渉の結果、有給休暇を完全に消化した上で退職し、退職時に会社から金銭補償を受け取ることで合意しました。
パワハラの認定は得られませんでしたが、実質的には私の主張が一定程度認められた形になりました。



退職勧奨を受けた場合、必ずしも会社の最初の提示条件を受け入れる必要はありません。有給休暇の完全消化、解決金の支払い、会社都合退職の確認など、交渉によってより良い条件を引き出せる可能性があります。専門家の支援を受けながら交渉することをおすすめします。
PIPと退職勧奨から学んだこと
今回の経験を通じて、私は多くのことを学びました。
PIPが始まったら注意すべきこと
- 改善項目は具体的で測定可能なものになっているか
- 達成基準が明確に示されているか
- 改善期間は十分に設定されているか


PIPが始まったら、まず改善項目と達成基準を確認してください。
「コミュニケーション能力」のような抽象的な項目だけでは、何を改善すべきか分かりません。
具体的な数値目標や行動指標を会社に求めることが重要です。
また、PIPの内容に納得できない場合は、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。



PIPに同意する前に、その内容をよく確認することが大切です。改善項目が抽象的な場合は、「具体的にどのような行動を取れば達成と認められるのか」を書面で明確にしてもらいましょう。曖昧なPIPに同意してしまうと、後から「改善が見られなかった」と言われても反論が難しくなります。
退職勧奨を受けたときの選択肢
退職勧奨を受けても、すぐに受け入れる必要はありません。
退職を拒否して働き続けることも、条件交渉をして退職することも、どちらも可能です。
私の場合は、精神的な負担を考えて退職を選びましたが、条件交渉によって金銭補償を得ることができました。
一人で判断せず、必ず専門家に相談してから決めてください。



退職勧奨を受けたとき、会社から「今決めないと条件が悪くなる」などと急かされることがあります。しかし、焦って判断する必要はありません。「検討する時間がほしい」と伝えて、専門家に相談してから返答しましょう。
私が今すぐ行動すべき6つのステップ
同じような状況にある方のために、私が学んだ行動ステップをまとめます。
パワハラやPIPの経緯を詳細に記録する
まず、上司からの嫌がらせやPIPの経緯を時系列で詳細に記録してください。
いつ、どこで、誰から、どのような言動があったかを具体的に書き出します。
記憶が鮮明なうちに記録することが重要です。
この記録は、後の交渉や法的手続きで重要な証拠となります。
証拠を保全する
PIPの書類、上司からのメール、人事からの通知など、関連する書類はすべて保管してください。
会社のパソコンにあるデータは、退職時にアクセスできなくなる可能性があります。
必要な資料は早めに手元に保存しておきましょう。
専門家の助言を受ける
法テラスや労働局、外国人労働者向けの相談窓口など、専門家に相談しましょう。
一人で判断せず、法的なアドバイスを受けることが重要です。
相談は無料でできるところが多いので、遠慮せずに利用してください。
パワハラ調査を要求する
パワハラがあったと考える場合は、会社に事実関係の調査を要求しましょう。
会社には、パワハラの申告を受けた場合に調査を行う義務があります。
調査結果に納得できない場合は、労働局のあっせん制度などを利用することができます。
退職条件の交渉を行う
退職を選ぶ場合でも、会社の最初の提示条件をそのまま受け入れる必要はありません。
有給休暇の完全消化、解決金の支払い、会社都合退職の確認など、交渉の余地があります。
専門家のサポートを受けながら、より良い条件を目指しましょう。
在留資格への影響を確認する
退職後の在留資格について、入国管理局や行政書士に確認しましょう。
会社都合退職の場合と自己都合退職の場合で、在留資格への影響が異なります。
次の就職先が決まるまでの間、どのような手続きが必要かを把握しておくことが大切です。
転職先が決まったら、14日以内に入国管理局への届出を忘れないでください。



PIPや退職勧奨の問題は、早い段階で対処することが重要です。問題を放置すると、会社側に有利な既成事実が積み重なってしまいます。少しでも疑問を感じたら、すぐに専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:同じ悩みを持つ外国人労働者へ
PIPや退職勧奨を受けて、途方に暮れている方がいるかもしれません。
私も最初は何をどうすればいいか分かりませんでした。
- 抽象的なPIPは退職に追い込むための手段として悪用されている可能性がある
- 退職勧奨を受けても、すぐに受け入れる必要はない
- あっせん制度を利用して退職条件を交渉できる
- 早い段階で専門家に相談することが解決への近道


しかし、専門家に相談したことで、自分にも権利があることを知りました。
あなたも一人で悩まないでください。
相談できる場所はたくさんあります。
外国人労働者にも、日本人と同じ労働者としての権利があります。
不当な扱いに対しては、しっかりと声を上げましょう。








